マクロン大統領のオリエンタリズム -啓蒙主義の価値観に応じたイスラム? 

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Translation / 翻訳

フランスのマクロン大統領がシャルリー・エブドのムハンマドの風刺画を容認し、「イスラムは危機にある、フランスの啓蒙主義(先入観を脱して理性によって世界を理解・把握するなどの意味)の価値観に応じるイスラムをつくりたい。」と発言したことは、イスラム世界の側からはオリエンタリズム、ネオ植民地主義の発言だという声が相次いだ。


 2015年にシャルリー・エブド襲撃事件が発生した時に、アメリカの言語学者のノーム・チョムスキーは、フランスなど欧米世界でイスラムを非難する声が大きくなると、こうした犯罪に対する自分たちの責任が大きければ大きいほど、犯罪を終わらせるために、自分の側にできることが多ければ多いほど、その責任を忘れ去り、否定する傾向すらあると述べた。

西洋には、侵略、暴虐、人権濫用から利益を得られるならば、それらの問題には関心がない
-チョムスキー
https://xdantesinfernox.wordpress.com/…/09/noam-chomsky/


 これを日本に置き換えれば、外国人技能実習生が罪を犯せば、その犯罪の背景にある日本の受け入れ側の問題にあまり触れられることはないのと同様なのだろう。


 パレスチナ人の思想家エドワード・サイード(1935年~2003年)は、『オリエンタリズム』(1978年)の中で、ヨーロッパは歴史的にオリエント(東洋)を自らとはまったく対照的なものとして、後進性、敵対性、非合理性をもつ実体としてとらえていると主張した。進歩を遂げた西洋が後進的なオリエントを「救済」するという美名の下に植民地主義、人種差別主義を正当化したというのがサイードの考えであったが、マクロン大統領の発言は、まさにこのオリエンタリズムという気がしている。

オリエンタリズムとは、オリエントを支配し再構成し威圧するための西洋のスタイルなのである -サイード
https://libquotes.com/edward-said/quote/lbp7i9u


 マクロン大統領は、世俗主義の擁護者であり、共和国とその価値を守ると誓い、彼がイスラムの分離主義と戦うことを明言することでイスラムのいっそうの政治化をもたらしている。しかし、マクロン大統領の姿勢は、チョムスキーが強調するように、自らを省みることがないように見える。


 フランスは、アフリカや中東のムスリムたちを植民地支配した長い歴史をもち、その無慈悲ともいえる植民地主義は、現地の伝統的な文化を破壊し、フランス社会のレプリカをつくろうとした。フランスは、アルジェリアの独立戦争で百万人以上の人々を殺害したとも見られているが、謝罪することはなかった。マクロン大統領の発言は、フランスがイデオロギーで植民地支配を再びイスラム世界に行おうとしていると見られても仕方がない。


 マクロン大統領は、大爆発があった後にレバノンを訪ねた時もレバノン人への愛を語ったものの、フランスがレバノンへの植民地支配で行ったことに触れることはなかった。彼は、フランスのムスリムは、フランス共和国の価値を尊重しなければならないと主張するが、しかし、イスラムに対する敬意が強調されることはない。


 フランスが人種主義に向き合うことなく、イスラムの改革だけを求めるのはやはり不公平であり、フランス国内のムスリムの心情に十分に配慮しているとは決していえない。
アイキャッチ画像はアマゾンより

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