「愛」―世界の普遍的な言葉 -心の中の平和を重んじたルーミーと、ベトナム戦争に反対したビートルズの「愛こそすべて」

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Translation / 翻訳

あなたがなすべきなのは、愛を探すことではなく、あなたの中で愛に対して築いたすべての障壁をただ求め、見つけ出すことなのだ  ―ルーミー

ルーミー

https://ameblo.jp/happy-naoyoga/entry-12597469753.html


 世界の平和を力によってではなく、人々が心の中に神の愛を感じ、また自我を否定することによって平和を築こうとするのがスーフィズム(日本ではイスラム神秘主義などとも訳される)である。スーフィズムの根幹にある精神は中庸と寛容(愛)と、日本で信仰される仏教の教えにもひじょうによく似ていて通底するものが大いにある。冒頭の言葉を残したルーミー(1207~73年)は、アフガニスタンのバルフ近郊で生れ、モンゴルの侵攻を逃れて各地を放浪した後にトルコのコンヤに定住したが、ペルシア語で作品を残したために「ペルシア文学最大のイスラム神秘主義詩人」とも形容されている。

踊るスーフィー(イスラム神秘主義者)
https://tvinemedia.blogspot.com/2015/04/see-wisdom-of-heavens-sufi-philosophy.html?fbclid=IwAR1QODx1PRcBYDDtGFlC7GUzmvzpYnGvJOOTml2rbOwkYRZ2aDwrX4iKe1g


 スーフィズムは神の愛を強調しながらも人間相互の差異、相違よりも普遍性や一体性を重んじる。神の愛を何よりも重んじるスーフィズムの教団はこのルーミーの言葉とビートルズの楽曲「All You Need Is Love (愛こそはすべて)」との共通性を見る。「All You Need Is Love (愛こそはすべて)」はジョン・レノンが作った楽曲で、ビートルズのベトナム戦争反対の想いが込められている(ウィキ)。イントロにはフランス国家の「ラ・マルセイエーズ」が使われているが、ジョン・レノンにはフランス国歌に表現される好戦的ナショナリズムを皮肉る意図があったのだろう。フランス国歌の歌詞は
http://www.worldfolksong.com/national-anthem/france.html などにある。


〔All You Need Is Love (愛こそはすべて)〕
All you need is love, all you need is love
All you need is love, love, love is all you need
All you need is love
All you need is love, love, love is all you need
君が必要なものは愛、君が必要なものは愛さ
君が必要なものは愛、愛なんだ、愛こそすべてさ
君が必要なものは愛
君が必要とするのは愛、愛なんだ、愛こそすべてさ
(演奏は https://www.youtube.com/watch?v=mojyVuHZGxQ にある)


 ペルシアの詩人ハーフェズ(1326頃~90年頃)にはスーフィズム的抒情詩を世俗的な恋愛の抒情詩に融合させた作品が多い。


すべての愛の錬金術ゆえにわが汚れた貌は金色に輝く。そう汝の祝福の恩寵ゆえに埃も金となる ―ハーフェズ


 スペインの詩人ロルカがイランの詩人ハーフェズの影響を受け、中東で生れた短い抒情詩の形態(=ガザル)の中で愛や恋愛を詠んだことは以前も紹介した通りだが、『ロルカ詩集』(長谷川四郎訳、土曜社)の中に下のような詩があり、ハーフェズの作風やテーマを彷彿させている。


「三つの川の小さなバラード」
オリーブとオレンジのあいだ
流れるグァダルキビール
雪から小麦へおちてくる
グラナダの二つの流れ
おお 恋よ
立ち去って帰らなかった!
ザクロ色の髯をはやした川
グァダルキビールよ
グラナダの二つの流れ
一つは涙 一つは血
おお 恋よ
空に消えた!
セビリヤには
帆舟でいく道がある
グラナダの水を
こぐのはため息ばかり
おお 恋よ
立ち去って帰らなかった!
風はオレンジにざわめく
高い塔 グァダルキビール
ダウーロとヘニールは小さな塔
沼のほとりで真でいる
おお 恋よ
空に消えた!
誰が言うだろう
水は泣き声の鬼火を運ぶと!
おお 恋よ
立ち去って帰らなかった!
アンダルシーアよ 運んでいけ
オレンジの花とオリーブを
おまえの海へ
おお 恋よ
空に消えた!


 下はスペイン・ムルシアで生まれたイスラム神秘主義(スーフィズム、内面を特に重視するもの)の思想家イブン・アラビー(1165~1240年)が詠んだ詩で、ロルカと同様な異文化を包摂しようとする多様性を見てとれる。


私の心はあらゆる形態を受け容れるようになった。
羚羊(ガゼル)のための牧草地、キリスト教修道僧のための僧院
偶像崇拝者の聖地、巡礼者が周囲をくるくる回るカアバ神殿
トーラー(ユダヤの律法書)の刻印、クルアーン(コーラン)の書
私は愛の宗教を告白する。
愛の隊商がどこに向かおうとも、愛こそが私の宗教であり、信仰である。

※アイキャッチ画像はオークフリーより

アマゾンより
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