いつかベルリンの壁のように ―イスラエルの分離壁

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 11月9日はベルリンの壁が崩壊してから33年。2014年11月、「ベルリンの壁」崩壊25年の記念式典で、ドイツのメルケル首相が「紛争や人権侵害など人類がいまだに抱えている『壁』を壊そう」と訴えたことを思い出す。


 世界にはイスラエルがヨルダン川西岸に築いた分離壁や、アメリカのトランプ前大統領が建設に熱心だった「国境の壁」、移民を攻撃する極右の台頭など壁を壊すとは逆行する動きがある。


 ベルリンの壁の高さは3.6メートルで、長さは155キロ、それに対してヨルダン川西岸にイスラエルが築いた分離壁は高さが8メートル、総延長は700キロ以上もある。壁内部に閉じ込められているパレスチナ人たちはメルケル首相がいう「暴力、イデオロギー、敵意」という「壁」にも囲まれた環境で暮らす。

残された壁の一部
https://futuretravel.today/notes-on-trump-from-the-berlin-wall-a8c3096aacd9


 イスラエルは2002年に分離壁の建設に着手したが、この壁の建設のためにもパレスチナ人の土地が没収された。分離壁の85%がヨルダン川西岸の占領地内部に入り組み、イスラエルのヨルダン川西岸での入植地拡大を既成事実化することにもなっている。2004年に国際司法裁判所は分離壁が不当で、実質的には領土併合と変わらないという判断を下したが、それでも「壁」は既成事実化してしまった。


 2016年2月、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は、米大統領選の共和党候補争いで有力なドナルド・トランプ氏が米国とメキシコ国境沿いに壁を建設するという発言を行っていることに対して、「橋ではなく壁を築くことばかり考える人は、キリスト教徒ではない。移住を強いられるという悲劇は今日の世界的な現象だ。」と語った(「朝日新聞」)。難民を受け入れに熱心ではない日本も高い壁を築いているようだ。

ドナルド・トランプなどには言えないだろう
「私はベルリン市民である」
https://www.pinterest.jp/pin/460000549413041134/?lp=true


 メルケル首相は、2019年11月4日、極右勢力のメンバーによって移民などが殺害された犠牲者を追悼する式典に出席したが、ドイツでは、旧東西ドイツの経済格差が残り、格差に不満をもつ旧東ドイツの極右は移民を襲撃したことがあり、2000年から7年の間にトルコ系移民など10人が殺害された。ドイツでは、移民の受け入れに反対する右派勢力も台頭しつつある。

壁は人の心を制することができない
https://listverse.com/2017/08/12/top-10-remarkable-escapes-across-the-berlin-wall/?fbclid=IwAR1dI4uA9KPrFIOL51Y4J6qtjeWCiTf-jPirj-Fhh_mnWO75uZl2KrdxK0c


 冒頭、紹介した壁崩壊25周年の式典で、メルケル首相は、ベルリンの壁崩壊の意義を「われわれには運命を自ら開拓し、より良くする力があることを示し、またウクライナ、シリア、イラクなどの市民も勇気づけられるものだ」と語った。壁を築くのは人間の心の問題ともいえるが、より良くしようとする意識や力が世界の市民の間で広く、多く共有されていることを信じたい。
 アイキャッチ画像は「もう33年も経つ」
ウィキペディアより

Beautiful Italian/German actress Anna
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