「ゴルゴ13」の中東政治への教訓 サウジアラビアへの米国による大量の武器売却を批判する「ゴルゴ13」

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 漫画家のさいとう・たかをさんは、「ゴルゴ13」の中で中東の某国指導者が偽物だという設定で話を描いたら、その国の大使館から抗議が編集部に来て驚いたことがあるそうだ。(さいとう・たかを語る『ゴルゴ13』中東の大使館から抗議も)
https://smart-flash.jp/entame/56224


 「ゴルゴ13」と中東とは少なからず縁がある。高倉健主演の映画「ゴルゴ13」(1973年)はロケ地が王政時代のイランで、旧体制のイラン社会の様子を知るにはよい資料ともなる。


 「ゴルゴ13」第58巻-1「110度の狙点」(発表1983年2月)は、サウジアラビアが舞台のストーリーとなっている。国王顧問のザルマン王子の姪がニューヨークで暴行され、殺害される。ザルマン王子は、ゴルゴ13に犯人の殺害を要請するのだが、実は犯人は自分の息子で、王位継承順1位のナッジャー皇太子だったことが判明する。そこで、ザルマン王子は、ゴルゴ13にハリージュ派(「不敬虔」と考えた者たちを殺害するハワーリジュ派なら実在するが)の刺客たちをニューヨークに送り、ゴルゴ13の暗殺を試みる。しかし、ゴルゴ13は、ハリージュ派の刺客だけでなく、ナッジャー皇太子までも・・・。

「ゴルゴ13」第58巻-1「110度の狙点」より


 当時のファハド国王やレーガン大統領など実在の人物も登場するが、サウジアラビア大使館が見たらクレームがつきそうな内容だ。

「ゴルゴ13」第58巻-1「110度の狙点」より


 ザルマン王子の発言として、「我が国が昨年、米国政府より購入した兵器の総数は55億ドル!他を圧する世界一の購入国であります!その半分を、フランス、西ドイツにふり向けると通告しただけでレーガンの首は危うくなります・・・大軍需産業と国防総省の産軍複合体が有する威力を彼は知り抜いているはずです!」というものがある。また、ザルマン王子はファハド国王に「万が一、イスラエルが核を使うハメに陥っても対象はイランであること!!」と進言する。

「ゴルゴ13」第58巻-1「110度の狙点」より


 何やら現在のサウジアラビアに武器売却に熱心なトランプ政権とカショギ氏殺害にまつわるムハンマド皇太子がダブるような古くて新しいテーマであり、1980年代前半の中東情勢やその国際関係からこの地域がまるで変化していないようだ。


 カショギ氏暗殺直後のG20にムハンマド皇太子は出席したが、欧米諸国・日本の首脳は冷ややかだったが、ロシアのプーチン大統領は満面の笑みで固く握手したそうだ。カショギ氏殺害という不幸な事件は、国内での人権侵害、イエメン空爆などサウジアラビアの政治風土に国際社会が注目する契機となっただろう。少なくともサウジアラビアによるイエメン空爆を停止させるような圧力を国際社会はかけるべきだが、サウジアラビアに武器を売り続けるアメリカやイギリスの姿勢は重要だ。
アイキャッチ画像は「ゴルゴ13」第58巻-1「110度の狙点」より

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