戦争の愚かな本質を子どもたちに訴えてきた元海軍兵士の瀧本邦慶(たきもとくによし)さんが12月に亡くなっていたことがわかった。16年8月に語り部の活動をいったん停止したが、18年3月に講演を再開した。13年の特定秘密保護法、15年の安保関連法、17年の「共謀罪」法と政府のタカ派的傾向が顕著になりながらも、選挙結果は、それらを推進する与党が勝ってしまう、「大人たちは信用できん」という思いで子どもたちや若者の命を守りたいという願いがあったからだ。
お国のために死ぬという決意から軍隊に身を投じたものの、戦中、南洋の小島で飢餓など過酷な体験をしたために、だまされたと思い、安全なところにいて、戦争を煽った軍の上層部、政治家、官僚たちを生涯許せなかったという。安保関連法を推進する政治家たちから、瀧本さんは戦中の記憶が明確に蘇ったことだろう。

若者よ、私のようにはだまされないでくれ。「国を守る」などという耳に心地よい言葉に惑わされないでくれ。若者を戦争で殺す。その戦争でもうける。それが戦争なんだ。そんな戦争なんかに行くな。頼むから命を大切にしてくれ。 ――瀧本さん
2019年1月29日、米国政府は売却価格約2350億円とも見積もられるイージス・アショア2基の日本への売却を承認した。米朝首脳会談が実現し、北朝鮮の脅威が薄らぐ中で、北朝鮮の弾道ミサイルの高度には届かないとも言われ、「絵に描いた餅」段階にある(読売新聞)イージス・アショアは「勿体ない」の極みだ。防衛省がイージス・アショアに採用するのは米国のロッキード・マーティン社の「LMDDR」という開発途上にあるレーダー・システムだが、トランプ政権は、このロッキード・マーティン社とも良好な関係を築き、ロッキード・マーティン社のジョン・ルード上級副社長を国防総省ナンバー3である政策担当国防次官に任命するなど、瀧本さんが表現するところの「戦争でもうける」姿勢を鮮明にしている。

ロッキード・マーティン社の前身ともいえるロッキード社が金もうけのために手段を選ばなかったことは、有名なロッキード事件でも明らかになっている。米国上院外交委員会多国籍企業小委員会の調査では1970年から75年までの間、ロッキード社は外国への手数料に総額1億6500万ドルを使ったが(田中角栄の受託収賄罪は5億円)、その大半がサウジアラビアであったことが判明している。その仲介に当たったのは武器商人のアドナン・カショギ(昨年10月にトルコで殺害されたジャマル・カショギは甥にあたる)であったが、1975年9月12日、多国籍企業小委員会でロッキード社のダニエル・ホートン会長は、カショギが武器売却に関して賄賂が必要だと説いていたことを明らかにしている。「戦争での金もうけ」はまさに汚い世界だ。

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