天にそびゆる喬木を
レバノン山の森に伐り
舟を造りて乗り出でし
フェニキア人のそれのごと

これは甲子園の高校野球でもよく知られる高知商業の校歌の2番で、石黒マリーローズ『レバノン杉と桜 ―日本人に平和と心の豊かさを問い直すレバノン女性の視点』(廣済堂、1991年)を読んでいたら紹介されていた。石黒さんは本のタイトルの通り、日本人と結婚したレバノンの女性だが、高地商業の校歌はレバノン人の先祖であるフェニキア商人の商才に学ぶことを説いているかのようだ。作詞者の竹村正虎は1881年(明治14年)生まれの高知商業の教員だった人で、病気で休職中の27歳の時にこの校歌を作詞したとあるから明治年間にレバノン人に関する知識をもっていたということになる。

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古代地中海東岸に栄えたフェニキア商人たちは、エジプト、バビロニア、クレタの影響の下に、紀元前12世紀頃から現在のレバノンの地中海沿岸都市シドン(サイダ)・ティルス(スール)を中心としてイスパニア(スペイン)にまで進出し、杉・銅・干し魚・染料などを輸出し、琥珀・錫を輸入して地中海貿易で活躍した。
私たち日本人もローマ字として使うアルファベットもフェニキア人に始まっている。アルファベットは、紀元前2000年頃にシリア・パレスチナで発明されたセム系文字に起源をもつとされる。特にフェニキアのアルファベットは前1000年から前700年頃ギリシア人に伝えられ、ギリシア人はフェニキア文字に母音を加えて、ギリシア・アルファベットをつくり、それがラテン文字やロシア文字となっていった。
同書の中ではレバノン国歌も紹介されている。
レバノン人よ、レバノンの国とために尽くそう
教育は、明日のレバノンの礎石
海も山もあるオリエントの宝石、レバノン
レバノン杉に象徴されるレバノンよ、永遠なれ
石黒さんはレバノン国歌にも詠まれる「教育」について「人間としてのもっとも大切な力、つまり豊かな心を感じ取り、あたたかな気持ちを素直に表現できるように、子供自身のもっている成長力を手助けしてあげることなのだと思う」と書いている。

本が出版された1991年は、1975年から続いたレバノン内戦が終わった翌年で、「桜は平和と繁栄の国・日本の象徴であり、レバノン杉は、内戦で傷つき、いまだに外国軍隊が駐留して将来への不安と困窮に暮らすレバノンの運命を象徴しているかのようである。」とも書いている。高地商業ナイン
アイキャッチ画像は2018年夏、甲子園で
https://www.kochinews.co.jp/article/205137/

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