27日付の日経新聞によれば、日本とUAE(アラブ首長国連邦)は「防衛装備品・技術移転協定」の締結に関して実質的に合意し、岸田首相は来日したUAEのハーリド・アブダビ執行評議会委員と会談し、この合意を歓迎したという。
映画『シャドー・ディール 武器ビジネスの闇』(2021年)は軍需産業が非人道的であり、世界平和、人権や開発よりも経済的利益(金)を優先して考えていることを告発しているが、ハーリド氏とにこやかに握手する岸田首相はUAEがイエメンを空爆し、イエメンの深刻な人道危機を招いた国ということをまるで意識していないようだ。これが岸田首相の言う「弔問外交」の成果なのだろうか。

https://unitedpeople.jp/shadow/
防衛装備品・技術移転がどういうプロセスで決まっているのか、またどのような装備品や技術がUAEに移転されるのか、日経の記事からは不明だ。中東の国については初めての移転だそうだが、国会で議論されている様子はない。政府の意向や判断だけでこのような装備品や技術の移転が行われ、それが紛争に用いられることを国会議員たちは黙認しているか、まるで意識していないかのようだ。
東京大学の小野塚知二教授は、「武器を輸出できる国へ日本を作り替える作業だけが静かに、国民から見つめられることもなく、着実に進んでいる」と述べている。
https://www.emp.u-tokyo.ac.jp/onozukat/armsexoprt_2016.pdf UAEへの防衛装備品・技術の移転はまさにその一環として行われている。
イエメンでは4月から停戦が発効しているとはいえ、UAEはイエメンの深刻な道危機をもたらした当事国だ。イエメン紛争では15万人が亡くなり、また飢餓で22万7000人以上が死亡したと国連は報告している。
サッカー元ドイツ代表のフィリップ・ラーム氏は、カタール・ワールドカップをボイコットする理由をカタールの外国人労働者の酷使などの人権侵害のためだとしているが、UAEはそれ以上の人権侵害をイエメンに対して行っていて、UAEの人権侵害に目をつぶって防衛装備品・技術の移転を行ってよいはずがない。

https://voi.id/ja/sports/199883/read
最近はイエメン情勢が報道される機会は少ないが、UAEやサウジアラビアなどの空爆を受けたイエメンは深刻な人道上の危機に直面している。今年3月の国連報告によれば、1、740 万人のイエメン人が食糧不足に陥っており、この数は今年12月までに 1、900万人に増加する見込みだという。また、130万人の妊娠中、あるいは授乳を行っている女性たちと、また220万人の5歳未満の子どもたちが深刻な栄養失調状態にあり、治療が切実に必要な状態に置かれている。同様に、1、780万人が安全な水と適切な衛生サービスを利用できないと推定され、現在の水道網は、イエメンの人口の30% 未満にしか届いていない。アフガニスタンで活動した中村哲医師は「武器より命の水を」と訴え、清潔な水さえあれば多くの人々を感染症から救うことができると考え、清潔な水のほうが抗生物質よりも感染症に役立つと訴えて井戸を掘削したり、用水路を築いたりした。

https://www.asianews.it/news-en/Five-million-children-risk-famine-in-Yemen-44971.html?fbclid=IwAR0p2Bwb83vk0E6Zmau1fYfMNNjT3fu55zZSPj3WejPfwE2qTeDoME7a7Yk
防衛装備品・技術の移転は経済的利益にはなるのだろう。米国は露骨に安直に武器の移転を行い、それが世界の紛争をより悲惨なものにしたり、軍需産業が絶えず戦争を望むことになったりしている。日本の政府・経済界もそんな米国の道を後追いしているかのようだ。日本の製造業は世界から敬意をもたれていて、中東などに行くと、日本人が作った電化製品がほしい、買ってもってきてほしいと言われたものだった。どうして「防衛装備品・技術」に重点が置かれ、民需で利益を上げることを重視しないのかと思わざるを得ない。
アイキャッチ画像は日本とUAEが実質合意 防衛装備品移転協定
岸田文雄首相は来日したUAEのハーリド・アブダビ執行評議会委員と会談した(26日、東京・元赤坂の迎賓館)=AP
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA26AHD0W2A920C2000000/
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