「自分が真実から目をそむけて子どもたちに本当のことが、語れるのか。」
これは、詩人・童話作家の宮沢賢治の言葉だが、彼に現在の中国の新疆ウイグル自治区など西域を描いた作品があることはあまり知られていないだろう。
賢治の『小岩井農場(下書稿)』には、
向ふから農婦たちが一むれやって来る。
実にきちんと身づくろってゐる。
たしかにヤルカンドやクチャールの
透明な明るい空気の心持ちと
端正なギリシャの精神とをもってゐる。
みんなせいが高くまっすぐだ。
黒いきものも立派だし
白いかつぎもよく農場の褐色や
林の藍と調和してゐる。
http://www.ihatov.cc/blog/archives/2009/07/post_636.htm
この作品からは、新疆ウイグル自治区にあるヤルカンドやクチャール(クチャ)ののどかな情景とともに、ギリシャ風の端正な顔をした仏像の表情が目に浮かんでくるようだ。

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文芸評論家で、宮沢賢治研究者の吉見正信氏は、宮沢賢治は法華経の信者であったものの、キリスト教やイスラムの精神の影響を受けていたと語る。賢治の弱者への優しい眼差しは、確かにイスラムのザカート(喜捨)やサダカ(任意の寄附)に通ずるものがある。宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』に見られるように、全人類への宗教的寛容の境地に到達していたのだろう。
現在でもウイグル地域がそうであるように、この西域ではブドウの栽培が盛んだ。ウイグルではブドウの収穫祭が行われるし、イラン詩にはブドウ酒(ワイン)が欠かせない。
イランの詩に「ふたりの友よ、私が死んだら、その墓は砂漠ではなく、クトラップに掘っておくれ。大きな石など積み重ねずに、ぶどうの園のなかほどの、ブドウ搾りの足音の聞こえるところ・・・。」というものがある。クトラップは、バグダード北西郊外に広がる有名なブドウ園で、この詩はブドウ酒を造るために人びとが足でブドウの実を足で踏みつぶす音を、墓の中でも聴いていたいという願望を表している。(宮城学院女子大名誉教授・山形孝夫氏の紹介による)

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「この世の中のことは、すべてのことは移ろいゆくものである。従って怠りなく努めなさい。」(仏陀の言葉)「何がしあわせかわからないです。本当にどんなに辛いことでも、それが正しい道を進む中の出来事なら峠の上りも下りもみんな本当の幸せに近づく一足づつですから」(宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
アイキャッチ画像は銀河鉄道-時空を越えて-
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