イラク戦争に反対したジュリエット・グレコと知的テロリズムとの闘い

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フランスの著名な歌手ジュリエット・グレコ(1927~2020年)の「ロマンス」が好きだった。他のスタンダードのシャンソンがそうであるように、多くの歌手によって歌われたが、グレコの代表曲の一つとなった。

言葉に込める ロマンス
春が微笑むと
愛の予感がするわ
このパリの街角に
パリは ほかならない
あなたのための街よ
ふたりでこの街を
とことん楽しみましょう
(壺齋散人・訳)
https://poesie.hix05.com/Chanson/chanson32.romance.html

 第二次世界大戦中、ナチスによって囚われの身となったグレコは「私は自分が死ぬまで幸福のために戦うということを知っている。恐怖政治と知的テロリズムと無関心と戦い、どうあっても我々が守りぬかなければならない唯一の宝、自由の剥奪に対して戦うのだ」と語っていた。


 イラク戦争についても、開戦直前の2003年2月12日付の「ルモンド」で「戦争を起こそうとしている米国の主張には何らの確かな根拠も証拠もない」「たとえサダム・フセインが大量破壊兵器を持っているという証拠が出されて、同じ大量破壊兵器で数千人もの人々を殺す必要があるのかどうか」と明確に反対の声を上げた。


「米国人の大多数派は、いわゆる『予防戦争』を認めているなどと新聞に書かれていても私は納得がいかない。」「(戦争が)もし起きれば、最近証言がでているような生涯身体的障害を負った兵士たちが出た湾岸戦争以上に米国人にとって厳しい結果をもたらす危険がある」「このような戦争を、米国民の多くの意見も聞かずに米大統領が決定するようなことがあってはならない」と語った。


 グレコが予想したように、確かな根拠のないイラク戦争で米兵の死者は4、507人、負傷者は32、292人、負傷者の中には重度の身体的障害を負った人々も少なからずいる。2014年11月11日に「反戦イラク帰還兵の会」は、イラク帰還兵は毎日22人が自殺していることを明らかにするなど、兵士たちの心にも深い傷痕を残した。

パリ
リュクサンブール公園
https://tabizine.jp/2016/11/09/99794/


 2020年9月、国連総会でフランスのマクロン大統領は、トランプ政権のイランに対する経済制裁など圧力強化は、中東地域の緊張を高めるもので、アメリカも批准した2015年のイラン核合意はイランが経済的圧力に応じたものであったと述べた。トランプ政権はイランへの圧力強化にヨーロッパ諸国の協力を促すように、イランが支援するレバノンのヒズボラがヨーロッパに爆発物をもち込み、テロを企てているという主張を行ったが、これについてもフランスやスペインは根拠がないと否定した。

パリの秋
エドゥアール・コルテスの画
http://lakevio.canalblog.com/archives/2010/10/16/18610935.html?fbclid=IwAR3vabOpzzaa0xvvQQIy2XUp8b670co8pL0mBInsIoW0ZtTwH3Rbl9TDLgo


 事実でないことを平気で主張するトランプ政権はまさにグレコが言う「知的テロリズム」の世界だったが、日本も含めて世界は米国の「知的テロリズム」に同調し、イラク戦争支持のような失敗を繰り返してはならない。

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