スティグリッツ教授が説く防衛費増額より対話、外交を

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 北朝鮮が弾道ミサイルを発射すると、ミサイル攻撃からの身の安全の確保の仕方を説明するテレビ番組を見ても結局ミサイルが飛んできたら天命に任せるしかないのではないかと思ってしまう。また、北朝鮮の軍事的脅威などに応じて、日本も防衛費GDP2%に増額をという話を聞くと、暗い気分になる。日本の財政赤字が1000兆円を超す中で、それほどの余裕もなく、また国民にもっと使うべき分野があるはずだ。それでも共同通信の世論調査では防衛費増額を支持する世論が半数を超えるそうだ。

Jアラートへの対処法。これで実際に役立つのだろうか。
岡山の大学で弾道ミサイル想定の避難訓練と聞いて加計学園かと思ってしまったが、環太平洋大学という大学だった
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rsk/173809?display=1


 ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツはNHK「ニュースウォッチ9」の中で日本経済の課題として人口減少と生産性の問題をあげていた。待機児童ゼロなど子育て支援の充実は待ったなしで、人口が増えなければ、国民の年金はますます先細るし、それこそ国民の安全に関わる話だ。日本の防衛費増額も国民の生活を犠牲にして軍備を優先する北朝鮮のように、国民を決して幸せにすることはない。元自民党の山崎拓氏は防衛費倍増をという議論は現実的ではないと一蹴する。(毎日新聞、7月4日)。兵器を増やせば兵器を維持・運用するだけの人員を増やさなければならないし、人員を増やすことは人件費も増えるということだ。山崎氏も財源の問題を指摘し、防衛費をいったん増額すれば、それを維持するか、増やしていかなければならない。

防衛費倍増に必要な「5兆円」教育や医療に向ければ何ができる? 自民提言受け考えた
2022年6月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/181138


 山崎氏は防衛費の増額はアメリカの軍需産業を喜ばすだけと語ったが、スティグリッツ氏もイラク戦争の時、失敗するアメリカの戦争経済について自著でイラク戦争は3兆から5兆ドルの軍事費が最終的には使われると見積もっていた。想像を絶するような額だが、軍事予算はアメリカの軍産複合体を潤すことになるが、その莫大な軍事費はアメリカ自身も社会保障費を削って行われ、また世界をも幸福にすることは決してなく、「対テロ戦争」でテロは止むことなく、米兵にも、イラクやアフガニスタンなど戦争の舞台となった国でも多数の犠牲が出た。


 スティグリッツ氏は、NHK「ニュースウォッチ9」で「私たちは地球という母なる大地に住んでいる。ほかに行くことができる惑星はない。経済的不平等や分断こそが世界の不安定化の背景にある。国同士が協調し、対話する姿勢をとり戻すことが肝要」と説いていた。日本もまたその責任の一端を負うことは言うまでもなく、防衛費の増額よりも国同士はまず対話、外交をしなければならない。

スティグリッツ氏
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2016/03/post-12.php


 北朝鮮の脅威を説く前に日本政府には北朝鮮と対話する必要があるだろうが、北朝鮮と対話する姿勢が希薄であり続けている。拉致被害者も2002年以来戻ってきていない。岸田首相は1月13日、拉致被害者救出を訴える国民大集会で、「拉致問題、私の手で解決」と述べたが、拉致被害家族はこの言葉をいったい何度聞いたことだろう。同じ国民大集会で2016年9月に安倍元首相は「拉致問題は安倍内閣で解決するとの立場にいささかも変わりはない。」と述べていた。7年8カ月続いた安倍政権や岸田政権の1年でも拉致問題には何の進展もなく、敵(その中心にあるのは北朝鮮だろうが)に対する「反撃能力」だけが声高に叫ばれている。


 スティグリッツ氏は「アメリカの共和党支持者の多くは大統領選の結果を認めていない。科学を信じない。気候変動も信じない。アメリカ国民の多くは米国での民主主義の存続について非常に心配している。」と語っていたが、日本でも民主主義の存続の危機は特に安倍政権の下で感じられた。特定秘密保護法、通信傍受法、個人情報保護法、平和安保法制の強行など。「日本で一番多いのは、年収100万円台で貯蓄ゼロの世帯という過酷な現実」という記事もある。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/11/post-97431.php?fbclid=IwAR0WkeLLNRwF5lA5G_D7LZbueyXrOSk3G4xtkSroJIAN0tOK9i5-8pmabm0

 政府が本来すべきは防衛費の増額よりもこうした国内の貧困対策、経済政策であることは言うまでもない。

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