「あのジョニーはもういない」 ~アイルランドの反戦歌とパレスチナ。NATOの「偽善」に怒るアイルランドの下院議員

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Translation / 翻訳

 ロシアはウクライナ東部2州を制圧しつつあるが、あからさまな武力侵略に対して国連の集団的自衛権が機能していないことに歯がゆいを想いをするばかりだ。また、ロシアは東部住民たちをシベリアやロシア東部に強制移住させていることも報じられ、スターリン時代にタタール人やチェチェン人などムスリム系住民を中央アジアに強制移住させたことや、日本人抑留者たちに強制労働をさせたことを思い出してしまう。国際法を蹂躙するロシアに対して欧米はウクライナに武器を供与するだけという印象も受け、停戦や和平に向けてもっと知恵をひねり出すべきだろう。これでは欧米は戦争の長期化やエスカレーションを望んでいる印象もあり、NATOに加盟していないアイルランドなどのほうが武器を供給する欧米諸国よりも、ウクライナ難民の受け入れに熱心だ。

アイルランドとパレスチナの連帯
https://www.haaretz.com/world-news/europe/2019-11-03/ty-article-magazine/.premium/a-proxy-israeli-palestinian-conflict-is-playing-out-thousands-of-miles-away/0000017f-f98c-d460-afff-fbee07370000?fbclid=IwAR2E218GCLpKGEB70LiscdSnAWQS9YtovN_iNgKykygfcxQTt8cyalQyApw


 下は、ベトナム戦争の頃に流行ったピーター・ポール&マリー(Peter, Paul and Mary)の「悲惨な戦争」の歌詞で、歌の動画は https://www.youtube.com/watch?v=AsBfAk89V_w にある。日本でもヒットしたので、聞き覚えのある方も少なからずおられるだろう。

The Cruel War is raging, Johnny has to fight 悲惨な戦争にジョニーは行ってしまう
I want to be with him from morning to night.  私は1日も離れたくないのに
I want to be with him, it grieves my heart so,  いつも一緒にいたいのに
Won’t you let me go with you?  あなたについて行きたいの
No, my love, no.  いえ、それは出来ないことね
日本語訳:レモン鈴木

シアーシャ・ローナンは、アイルランドの女優。 名の「Saoirse」はアイルランド・ゲール語で「自由」を意味する。 ウィキペディア
https://wblog.wiki/no/Saoirse_Ronan


 この歌の起源はアメリカの独立戦争、あるいは南北戦争という説もあるアメリカの古いフォークソングだとされる。歌詞の中に出てくる「ジョニー」という名前は、戦争にまつわる歌ではしばしば登場する。アイルランドの反戦歌に「あのジョニーはもういない」という歌があり、動画は https://www.youtube.com/watch?v=U4Aaif06TYo にある。こちらの歌も聞き覚えがある方は多いだろう。曲は勇壮な印象も受けるが、下にあるその歌詞の一部はやはり悲惨な戦争の様子を表わしている。


You hadn’t an arm, you hadn’t a leg,
Hur-roo Hur-roo
You hadn’t an arm, you hadn’t a leg,
Hur-roo Hur-roo
You hadn’t an arm, you hadn’t a leg
You’re a spinless, boneless, chickenless egg
You’ll Have to be put with the bowl to beg
Johnny I hardly knew ya
あなたは腕を失くし、脚を失くした
ハールー ハールー
あなたは腕を失くし、脚を失くした
ハールー ハールー
あなたは腕を失くし、脚を失くした
あなたは寝返りも出来ず、骨もなく、失うものさえない
あなたはただ救いを求め、哀れな残骸を横たえなければならない
ジョニー 私にはどうしてか分からない
http://blog.livedoor.jp/lemontree123/archives/529109.html


「あのジョニーはもういない」の国アイルランドは、NATOに加盟していないが、人口500万人ぐらいのこの国は他の西ヨーロッパの国々よりも多くのウクライナ難民を受け入れ、2022年5月下旬時点でその数は3万人以上となった。アイルランドの難民支援組織も迅速な政府の対応に肯定的な見方をしている。難民たちは、ホテルB&B、ボランティアの家庭などに身を寄せるようになった。


 アイルランド議会の中では、人種主義のアパルトヘイト政策を行う政府の代表であるイスラエル大使を追放すべきだという声も上がっている。アイルランドのパレスチナへの共感は、アイルランドが1649年のクロムウェルの植民地化から1931年の完全独立までイングランドの植民地として置かれ、植民地時代に餓死で人口の半数が消失したと見積もられるジャガイモ飢饉などパレスチナと同様に植民地としての苦難の歴史があったことと関連する。


 1967年の第三次中東戦争で多数のパレスチナ難民が発生すると、1969年にアイルランド議会でフランク・エイケン外相は、パレスチナ難民の問題を解決することがアイルランドにとって最も緊急の課題であると述べた。アイルランドはパレスチナ難民の帰還なしに中東の平和はあり得ないという立場をとり続けている。


 アイルランド下院議員のリチャード・ボイド・バレット氏(1967年生まれ)は、NATOの「偽善」を批判する発言をフェイスブックなどで発信している。

NATOは偽善だと説くアイルランドのバレット下院議員
https://www.youtube.com/watch?v=ZD4po_y5Noc


 欧米の政治家たちはNATO拡大や軍事費の増額を正当化するためにウクライナの戦争を利用していると述べ、ウクライナで起きていることはイエメン、パレスチナ、イラク、アフガニスタンと同様に、帝国主義戦争であると主張する。プーチン大統領は血に飢えた帝国主義者だが、同様に、米国、英国、フランスも帝国主義戦争を行っている。米国、英国はイラク戦争で大量破壊兵器について嘘をつき、100万人の人々が犠牲になった。英米仏はロシアのウクライナ侵攻を非難するけれども、サウジアラビア王政のイエメン空爆については非難の声を上げることはない、これは「二重基準」だというのがバレット議員の主張だ。


 ウクライナの戦争を契機に軍事費の増額の口実にするのは日本の同様だ。岸田首相は米国のバイデン大統領に防衛費について「相当な増額」を行うことを伝え、国民が関知しないところで、国際公約としてしまった。日本は戦前欧米の帝国主義の後を追って破滅の道に至ったが、ウクライナ戦争を契機に帝国主義の道を歩むことにならなければよいがと思う。

アイキャッチ画像レコードジャケット
https://merurido.jp/item.php?pdid=SCAAA012459&fbclid=IwAR0HtBjRbQfctRFcJJmx3NHf6vreeDLx_Ad31CILPjBbbQYYPmzvECB4RA8

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