アルジェリアの独立・反帝国主義闘争に共感した日本人たち

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Translation / 翻訳

 7月5日でアルジェリアが独立してから61年が経った。日本の大学生など若者たちがアルジェリア独立運動を支持したのは、一つには日本が戦争に敗れ、アメリカの占領下に置かれ、さらに日米安保条約によって米軍の基地が継続して日本に置かれたことがある。120年以上もフランス支配の下に置かれたアルジェリアと当時の日本の姿がダブったに違いない。現在の沖縄に見られるように、地位協定によって米軍基地には排他的管理権、事実上の治外法権が認められ、日本が平和条約を結んでも半植民地状態に置かれているという思いが多くの日本人に共有されていたと思う。

映画「アルジェの戦い」より
https://www.sensesofcinema.com/2018/cteq/battle-o/

 アルジェリアなど北アフリカを対象に文化人類学を研究している宮治美江子氏は、アルジェリアで過酷な独立戦争が戦われている中、日本でも「60年の日米安保条約反対闘争が激しさを増し、大学に行けば『デモに行きませんか』と誘われ、都心でのジグザグデモにも参加した。・・・そうした政情の中で私たちは、独立戦争の最終段階で、フランスのマシュ将軍による壮絶な空爆や厳しい拷問に耐えて闘うアルジェリアの人々に共感したのである。」と書いている。(宮治美江子「中東研究者が今考えること 戦争体験・アルジェリア独立・チュニジア市民の力」長沢栄治・栗田禎子編『中東の日本の針路 「安保法制」がもたらすもの』)

60年安保闘争

 フランスの作家サルトルが人権を唱える国のフランスが植民地を抑圧することに反対し、アルジェリア独立戦争(1954~62年)を支持したように、フランス文学者でもあった作家の堀田善衛(1918~1998年)は独立運動の中心にあった「民族解放戦線(FLN)」に強い共感を抱いた。堀田は、1959年にアジア・アフリカ作家会議日本協議会事務局長に就き、民族解放運動に参加して弾圧されるアルジェリアなどアフリカの作家たちが人間解放という課題に真正面から取り組む姿勢に作家として大きな刺激を受けたと述べている。

 アルジェ大学のデベシュ教授は、『日本・アルジェリア友好の歩み―外交関係樹立五〇周年記念誌』(千倉書房、2014年)の中でアルジェリアが日本に対して前向きな見方をしてきたのは、アルジェリア独立戦争の最中にフランスの反対にもかかわらず、日本がアルジェリア独立運動を担った「民族解放戦線(FLM)」の事務所を東京に開設することを認めたことが根幹にあり、アルジェリア人は日本の立場を高く評価したと語っている。また、デベシュ教授は日本がフランス帝国主義のもたらしたアルジェリアの破壊や社会的被害からの復興に貢献し、教育に力を入れ、軍事費を制限しつつ、西洋の産業技術を採り入れながらも、日本の伝統的文化も融合し戦後復興に成功したことを評価している。宮治氏はその日本が5兆円を超える防衛予算に加え、海外で戦える軍隊を派遣したらアラブ世界の日本への評価はどうなるかと述べている。

https://booklive.jp/product/index/title_id/973228/vol_no/001

 1830年から1962年までフランスの直轄支配を受けたアルジェリアは植民地主義の下に置かれる人々に強い共感がある。2014年のサッカー・ワールドカップ・ブラジル大会でベスト8に入ったアルジェリア・チームにFIFA(国際サッカー連盟)から900万ドルが与えられたが、その一部をパレスチナ・ガザに寄付したこともあった。アルジェリア・チームのイスラム・スリマニ選手は、「ガザの人々のほうが我々よりもお金を必要としている」と語った。アルジェリアの人々は植民地主義の側にいるような日本を見たくないことだろう。

堀田善衛はなぜ「ベ平連」に関わったのか
https://books.j-cast.com/2018/12/04008323.html
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