パレスチナ・ガザの女性たちの生活や民族的誇りを支える日本製ミシン ―軍産複合体から脱したJUKIミシン

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 中東専門紙「ミドルイースト・アイ」にパレスチナ・ガザのファッション・デザイナー、ニールミーン・ホウラーニーさんの活動が紹介されている。ホウラーニーさんはフランスの機関から2000ドルの助成金を得て、日本のJUKI製の縫製ミシンを購入し、衣類を制作し始めた。それらをインスタグラムで販売するようになり、大きな反響を得るようになっている。そのデザインの秀逸性や独創性で多くの注文を得るようになった。記事によれば、ニールミーンさんは小さなブティックを営業しながら、中間層の女性たちを中心に自らの製品を販売するようになっている。

ニールミーンさんのブティック
https://www.middleeasteye.net/discover/gaza-palestine-fashion-clothes-designer-nirmeen-hourani?fbclid=IwAR2uoblq_eaVJ2F4phwczvwSlJ8-fuyV8iKxcdFrNGCiGbSpjydcTk0Lkm8


 ガザは2007年からイスラエルによる封鎖が始まり、発電所もイスラエルが掌握し、ニームリーンさんも自分自身の自家発電機を購入してファッション・デザインの仕事を行っている。発電費用の負担も経済的に決して豊かとはいえないガザ住民の彼女にとっては決して軽くはないようだ。耐久性のある日本製ミシンは彼女の仕事の重要なパートナーであることは疑いがない。ファッションや刺繍がガザの女性たちに経済力を与える重要な手段になっている。ニールミーンさんはガザでも自分のような女性が増え、女性が経済的に自立することを望んでいると語る。新たなファッション・デザイナーの登場は自身のライバルというよりもガザ社会の活性化のために好ましいと考えている。

パレスチナ刺繡帯
https://kokucheese.com/s/event/index/569346/


 JUKIなど日本製ミシンは、パレスチナだけでなく、多くの中東諸国で女性たちの職業的自立に貢献するようになっている。ミシンはパレスチナ刺繍の布の縫い合わせにも欠かすことができず、その意味でも日本製ミシンはパレスチナの民族的誇りを支えている。


 JUKIは日本の戦時中の昭和13年に国策会社の東京重機製造工業組合として出発し、元々九九式小銃を製造することを目的としていた。昭和18年に組合を解散して東京重機工業会社となった。日本が戦争に敗れると、占領軍によって軍需産業は活動が禁止されるが、軍需産業に使用した施設を民需に転換できるものとしてミシンに目をつけ、昭和20年10月25日に占領軍から民需転換の許可を得てミシン部品製造を開始、昭和22年にHA-1型家庭用ミシンを開発した。昭和63年に社名を東京重機工業株式会社から現在のJUKI株式会社に変更した。


 イラク戦争が始まる頃、経済同友会の会長だった品川正治(まさじ:1924~2013年)さんに、どうしたら軍産複合体のネガティブな影響力を封じて戦争を減らしたり、なくしたりすることができるのでしょうと尋ねたことがあった。品川氏は即座に軍需産業を民需産業に変えればいいんですよと答えられていた。軍需から民需への転換を図り、製品が世界的にも高い評価を受けるJUKIはそういう意味では戦争を減らすための世界に冠たる手本である。

アマゾンより


 軍需産業が高い利益を得ようとする限りは国防費GDP比2%につり上げるなど根拠のない議論が出てきて、国民の福祉を食いつぶしてしまうことだろう。軍産複合体が政治に影響力をもつ限りは軍需産業の生産ラインは停止することなく、ウクライナ戦争など新たな戦争が次々と発生することだろう。パレスチナ・ガザの女性ファッション・デザイナーは私たち日本人に貴重な教訓を与えている気がする。

アイキャッチ画像はニールミーンさんが使用するJUKIミシン
https://www.middleeasteye.net/discover/gaza-palestine-fashion-clothes-designer-nirmeen-hourani?fbclid=IwAR0k64NyNk_zpsXiN54Dde3nWbegCo-HohK4EfiI4hHwS5fcK5Bcy54pkGI

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