2016年12月28日、アメリカのケリー国務長官はイスラエルの入植地拡大が中東和平を脅かしていると指摘、パレスチナとの二国家共存が実現しなければ、アラブ諸国との真の和平は達成できないと述べた。ケリー国務長官はイスラエルの安全を脅かすのは、和平の障害となっている入植活動だと訴えた。
これに対して、イスラエルのネタニヤフ首相は、ケリー長官の発言は偏見に満ち、パレスチナ側がユダヤ人国家建設に反対していることに目をつぶっていると語り、またアメリカのトランプ次期大統領はツイッターでオバマ政権の中東政策を非難し、「イスラエルが軽視され無礼に扱われる状況を続けることはできない」と述べた。
しかし、国際社会がイスラエルの入植地拡大を批判することは、イスラエルを軽視しているわけではまったくなく、国際法に照らして正義や公正を求めているもので、またパレスチナは1993年のオスロ合意によってイスラエルとの共存を国際的に認知される形で受け入れている。ネタニヤフ首相の主張は、「言いがかり」というしかない。
1980年10月、伊東正義外務大臣は、国会の「安全保障及び沖縄・北方問題に関する特別委員会」で中東和平の基本がパレスチナ問題にあり、パレスチナの民族自決権を認めなければならないという考えを明らかにした。伊東外相は、二国家共存でなければ中東の平和が実現しないし、イスラエルの外相にもPLOとイスラエルが相互に認めることが平和の第一歩ではないかと意見を述べたことを紹介している。伊東外相の考えは、その13年後のオスロ合意で実現することになったが、現在のイスラエルのネタニヤフ政権はパレスチナ国家建設をいっこうに容認しないばかりか、民族自決権の基礎となるパレスチナ人の土地まで奪っている。
1967年の中東戦争の後、国連総会で「武力で併合した領土は認められない」と三木武夫外相は演説し、副総理時代の1973年に「パレスチナの子供達のつぶらな瞳を裏切ることは出来ない」と述べて中東和平の重要性をあらためて強調した。
1973年にレバノンで、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)の活動家で、旅客機のハイジャックを行ったこともあるライラ・カリドは、翌年に参議院議員になる山口淑子氏に「私は日本人が平和を愛好する国民であり、すばらしい科学技術を持っていることは知っています。(中略)他の国の人の苦しみを感じとるのに、距離など問題ではないと思います。日本人も、私たちと一緒に起ち上がって欲しい。誰もが隣人の苦しみを感じとるように。」と語っている。(山口淑子『誰も書かなかったアラブ “ゲリラの民”の真実』より)

力によって土地を奪われ、自らの故地を奪われていく人々の心情に、日本政府はかつての保守政治家たちのように、寄り添ってほしい。


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