もうすぐクリスマスだが、戦争を経たイラクでも北部モスルなどでクリスチャンたちがクリスマス・ミサを北部都市モスルなどで行う。
この20年間にイラクのクリスチャン人口は8割減った。1987年の国勢調査では、クリスチャン人口は140万人ぐらいだったが、現在ではおよそ25万人だ。多くが戦争やISなどの暴力から逃れて北米、西ヨーロッパ、オーストラリアに移住していった。

昨年のクリスマス・ミサ イラク北部モスル
イラクのクリスチャンたちは民族的にはアッシリア人たちで、東方教会に属す。礼拝の用語は、イエス・キリストが話していたとされる古代アラム語だ。アラム語は現在でもレバノンの一部などで話され、シリア、メソポタミアで用いられていたヘブライ語やアラビア語と同じセム語派の言語だ。現代のアッシリア人が話すのは口語アラム語だ。
JICA(国際協力機構)の招きで信州大学に留学し、2013年3月まで4年間小児ガンの研究をしていたイラク・クリスチャンの女性医師リカー・アルカザイル(Likaa Alkzayer)さんもモスルから「イスラム国」の暴力を避けて2014年7月に「認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF・松本市)」の支援で松本市に戻り信州大学医学部特任講師として研究活動を行っている。

リカアさん
イラクでは、小児急性白血病患者が増加しているが、化学療法で治癒する可能性があることを知ったリカーさんは、信州大学医学部の研究グループで小児急性白血病治療の研究を行ってきた。
イラク戦争の激戦の地であったファルージャでは、新生児の障害が5人の1人に上り、米軍が戦闘で使用した劣化ウラン弾がその原因という説が有力だ。ファルージャの新生児の障害を扱ったドキュメンタリーには「ファルージャで何が起きているのか~イラク戦争の傷痕~」(NHK)などがある。
リカーさんがイラクで暮らし続けていれば、イラクで病気のために苦しむ子供たちを救うことができた。それでも日本チェルノブイリ基金は立正佼成会の「一食平和基金」や外務省の「NGO連携無償資金」などの支援を受け、イラクの小児がん専門の医療関係者たちを長野県の医療施設に研修のために招請したり、麻酔によって子供たちが痛みを感ぜずに骨髄の検査を受けることができる麻酔器をイラク・モスルの病院に贈ったりしている。

信州大学のポスター
Haifa ZanganaHaifa Zangana,”Why does Iraq top the lists of the world’s ‘worst’ countries?” Middle East Monitor, December 22, 2021によれば、イラクは気候変動、石油産業など掘削事業、水不足など環境破壊が深刻で、さらにイラク戦争は2003年から2007年の間、1億1400万メトリックトンの二酸化炭素を排出したが、これは同時期の世界全体の6割を構成していた。
日本政府はこのイラク戦争を支持してしまったが、小児ガンの問題は原発事故を経た日本も無関係ではなく、イラクの子供たちの問題に日本人も関心を寄せてほしいとて思う。

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