イラン・テヘラン在住のサベル(アスィエ・サベルモガッダム)さんは1990年に国費留学生の夫と一緒に来日し、日本語や日本文化に関心をもつようになり、イランに帰国後テヘラン大の日本語日本文学科に入学、卒業と同時に日本語科の講師となった。

https://digital.asahi.com/art…/photo/AS20170609003196.html
彼女が特に関心もっているのは宮沢賢治だが、昨年6月に来日を計画した際に渡航費30万円が不足していたのを文教大学の鈴木健司教授が賢治研究用に蓄えていたオパール鉱石をネットオークションで売却することによって工面した。鈴木教授は「宗教、政治、イデオロギー、すべてを相対化して相克した賢治の地球市民的な考え方を、今のイスラム世界で広めることの意義は深い」と考え、サベルさんの支援を思い立った。
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スンニ派・シーア派の対立、泥沼のシリア内戦など紛争や混乱を抱えるイスラム世界に必要なのは地球市民的な考えということはよく言い得ることだ。

https://dogatch.jp/news/tbs/52544/detail/
サベルさんは「雨ニモマケズ」など31編を収録した宮沢賢治の訳詩集を出版し、「宮沢作品は仏教観を反映したものが多いのですが、どれも生活や自然を描き、純粋で美しい。宗教の違いを超えてイラン人の心に響く」と語っている(『読売新聞』中西賢司記者の2016年4月15日付)。
宮沢賢治の有名な詩「雨にも負けず」には下のように書かれている。
雨にも負けず、風にも負けず
(中略)
東に病気の子供あれば、行って看病してやり
西に疲れた母あれば、行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば、行って、怖がらなくてもいいと言い
北に喧嘩や訴訟があれば、つまらないからやめろと言い
(後略:漢字などを用いて表記を変えた)
イスラムの聖典である『コーラン(クルアーン)』の「婦人章第36節」には「アッラーに仕えなさい。何ものをもかれに併置してはならない。父母に懇切を尽くし、また近親や孤児、貧者や血縁のある隣人、血縁のない隣人、道づれの仲間や旅行者、およびあなたがたの右手が所有する者(に親切であれ)。アッラーは高慢な者、うぬぼれる者をお好みになられない。」とある。この章句などは「雨にも負けず」の精神世界にきわめて似ていることに気づかざるをえない。

http://kinikini-news.seesaa.net/article/397637220.html
宮沢賢治の詩が広くムスリムの間でイスラム本来の教えを意識する媒体になればと思う。金子民雄『ルバイヤートの謎―ペルシア詩が誘う考古の世界』(集英社新書2016年)にはオマル・ハイヤームの「ルバイヤート」が賢治の詩に与えた影響について言及があり、「酒は飲まない』はずの賢治がチューリップのように赤い酒に惹かれ、なぜ何度も詩や童話を書いたり、自家製のものを飲んでみる気になったのか。やはりそこには、オマル・ハイヤームの影響が相当あったとしか思えないのだ。」(154~155頁)とある。
酒をのめ、それこそ永遠の生命だ、
また青春の唯一の効果(しるし)だ。
花と酒、君も浮かれる春の季節に、
たのしめ一瞬(ひととき)を、それこそ眞の人生だ!
―オマル・ハイヤーム 小川亮作 訳
「ルバイヤート」(岩波文庫)
雨ニモマケズ・抜粋 宮沢賢治
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g226833666
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