昨年法務大臣を更迭された葉梨康弘は「外務省と法務省、票とお金に縁がない」という発言した。日本の政治家たちはそのような感覚をもっているのかと驚きを禁じ得なかった。だから岸田首相がCOP27に不参加で世界から顰蹙を浴び、日本は3回連続の化石賞を「受賞」してしまうことにもなったと思う。

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COP27にはアメリカのバイデン大統領、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相も参加するほど環境問題は世界では最重要とも言ってよいほどの政策課題になっているが、日本の政治家にはそのような国際感覚も問題関心もないのだろうか。政治家たちは票にならない国際問題、さらには日本に関わる世界史などにも関心が薄いに違いないと思ってしまう。
11月11日は、第一世界大戦の連合国(日本も含む)とドイツとの休戦協定が1918年に成立した日だ。イギリスや英連邦の国々では「リメンブランス・デー(Remembrance Day: Poppy Day, Armistice Day, Veterans Dayなどともいう)」として休日となっている。アメリカでも「休戦記念日(Armistice Day)」だったが、1954年に「復員軍人の日」になった。この大戦では航空機による攻撃という戦争形態も生まれ、兵士、市民にかかわりなく戦争に巻き込まれるようになり、戦争の犠牲者は4000万人にも上った。

第1次世界大戦中の好景気で大きく儲け,財産を蓄積した人をいう。(コトバンクより)
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大戦以前は貿易赤字に悩んでいた日本は連合国側に軍需品を供給し、輸出が大幅に増えて景気がよくなった。「大戦景気」と呼ばれ、アジア諸国からヨーロッパ製品が著しく減少して、そこに日本の商品が入り込んで日本経済は大いに潤った。世界的に船舶が不足したことから「船成金」と呼ばれる大金持ちも現われた。工場労働者は大戦が始まった1914年には85万人であったが、1919年には147万人となるなど産業規模が拡大する一方で、労働運動が成長することになった。
第一次世界大戦後のパリ講和会議で、世界平和のために国際連盟が創設された。日本はこの機構の創設に消極的だったが、それは、「アメリカやイギリスなどの白人が主導権を握る国際機関では、日本のような黄色人種の意見が通らなくなってしまうのではないかと懸念したからだった。そのため日本は、国際連盟の規約の中に「人種差別を撤廃すべし」という条項を入れることを要求した。
日本は第一次世界大戦中に対華21か条の要求を出し、中国大陸への強引な姿勢を明らかにした。これに対して中国は日本の要求の撤回を求めたが、大戦中に地中海にまで軍艦を派遣した日本を評価してイギリス、フランスなどは中国の主張を斥けた。対華21か条の要求の背景には膨張する資本主義の市場を求めて中国に進出したいという経済界の意向もあった。

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日本海軍は地中海のマルタ島を基地にして、連合国側の兵員70万人を輸送した。ドイツのUボートと35回交戦し、駆逐艦「榊」が魚雷攻撃を受けて大破し、艦長ら59人が死亡するなどの犠牲が出たこともある。「集団的自衛権」の第一次世界大戦版である。
1917年にロシア革命が発生すると、ロシアの内戦に加担することを恐れられたオスマン帝国(トルコ)の捕虜たちはシベリアに抑留されたが、シベリアに出兵した日本軍がトルコ人捕虜たちを平明丸でイスタンブールに護送したというエピソードもある。
日本と同じように第一次世界大戦で戦場にならなかったアメリカも520億ドルの戦費のうちその3分の1が企業家たちの利益となり、21000人以上の億万長者を生むことになった。アメリカでは「休戦記念日(Armistice Day)」では「善意と相互理解を通じて平和を永続化する精神」が1926年に議会の決議として成立したが、「復員軍人の日」になっていつの間にかその精神は薄れ、戦争による金儲けが露骨になっていった。
第一世界大戦は、戦争経済で日本を潤し、日本に植民地主義的野心をもたらし、海外派兵までも行った。戦争で拡大した経済を支えるために、日本は国外の植民地にいっそう関心をもつようになり、日本の破滅をもたらしたアジア・太平洋戦争に至る道を開くことにもなった。なぜ戦争が発生するのか、日本の政治家たちはそのからくりを真摯に勉強すべきだ。票にはならないが、国民の生命に関わる問題だ。
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11月11日は忘れてはならない日だ。第一次世界大戦は産業革命がもたらした大悲劇だった。戦争の大義も見いだせないだろう。
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