紛争国マリで支援活動を行う日本人女性元歯科医

日本語記事
スポンサーリンク
Translation / 翻訳

 山梨県・甲府市でテレビ・ニュースを観ていたら、甲府市立・山城(やましろ)小学校の生徒たちが西アフリカのマリ共和国に贈る米150キロが17日、トラックに載せられて学校を出発したというニュースがあった。食糧難の国に贈る米は今年で27年目になるそうだ。マリはアフリカの気候変動もあって農地が減少して、食べられなくなった農民たちの中には、1970年代以降、北アフリカのリビアに移住してカダフィー大佐の私兵になる者もいた。しかし、2011年に「アラブの春」の政治変動でカダフィー政権が倒れると、マリに帰国して武装集団を形成したり、隣国アルジェリアの過激派に加わったりする者たちも現れた。

マリとその周辺
https://www.travel-zentech.jp/world/map/Mali/Map_of_Mali_and_neighboring_countries.htm?fbclid=IwAR3PBgblYylcGSd1H6Um2fCp7L4D4JdSaKGrLyk0FKEJF8_GKnolra1PXUY


 2013年に日揮の社員たちを拉致して制圧された過激派はマリ出身者たちを主体としていたと見られている。マリでも食えないという現実から武装集団に入る若者たちが後を絶たない。山城小学校の取り組みは子供たちに国際社会の問題に目を向けさせ、何らかの考察の機会を与えるという点で評価できるものと思った。


 そのマリで井戸掘りや医療の支援活動を行う日本人女性がいる。新潟市で個人の歯科医を開業していた村上一枝さん(1940年生まれ)は、マリを旅行中にユニセフの医師が予防接種をしているのを見て、歯科以外にも現地の人々の健康や衛生、栄養面で役に立てることがあるのではないかと思い、私財を投げうってマリに渡った。最初は日本のNGO「サヘルの森」の植林活動に参加した。「サヘル」とはサハラ砂漠南縁地帯を指すが、この地域では農地の減少が特に著しくスーダンのダルフールでの紛争も限られた農地の奪い合いという性格が強かった。日本ならば容易に治せる病気でもマリでは続々と亡くなっている人が少なからずいることを知り、自分に貢献できることがないかと考えたという。


 現地のNGO関係者からマディナ村を紹介してもらい、そこで保健衛生の改善のために何が必要か調査活動を行うようになる。ちなみにマディナ(マディーナ)とはアラビア語で「都市、町」の意味で、アラビア半島西部にある預言者ムハンマドが最初にイスラム共同体を興した町もマディナである。女性たちには編み物や縫物を教えて、女性たちの生活改善を促した。子供たちの学校ではマラリアや寄生虫の予防にも尽力した。1992年に「マリ共和国保健医療を支援する会」を設立して、翌1993年に「カラ=西アフリカ農村自立協力会(CARA)と改称して現在に至って活動を継続している。

https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/lifestyle/entry/2019/019553.html?fbclid=IwAR1DMMXuqkeuwlBMzldrG7SijGB-iJnkSWHcCFBrEXIKYjH2-I24_3t5Ey0


 その活動は多岐に渡り、識字教育や学校建設、水資源確保のための井戸の設置、マラリアやエイズなどの病気予防、助産師の育成、産院や診療所の建設などその活動は実に多岐にわたる。妊娠、出産で命を落とす女性が多い中で助産師を育成できた時には達成感があったという。ちなみに一人当たりGDPによる貧困国ランキング(2019年)でマリ共和国は24位(1位は南スーダン、9位までアフリカ諸国が続き、10位がアフガニスタン)だ。https://statisticstimes.com/…/poorest-countries-by-gdp… 
 マリ共和国は宗教的にはイスラムを信仰する人が80%を占め(外務省のデータ、ウィキでは90%)、「イスラム協力機構(OIC)」に加盟している。昨年12月のニュースでは干ばつなどを背景に120万人が飢餓状態にあるという。UNHCRによれば昨年初期の段階で30万人が国内避難民であった。フランスは5000人の兵力をマリに投入して「イスラム武装集団」との戦闘に従事させているが、暴力の抑制には中村哲医師が活動していたアフガニスタンと同様に、軍事力よりも村上さんが取り組むような民生の安定のほうが重要で、アフリカの暴力の中心ともいえる国に、フランスをはじめ国際社会がもっと目を向けるべきだ。村上さんは日本人へのメッセージとして「イスラム国(IS)」は真のイスラム教徒とは違うということを知ってほしいと述べている。

https://note.com/mikiranjirou/n/na65d64e26aaf


 村上さんには、2001年読売新聞社主催第29回「医療功労賞」、13年2月毎日新聞社主催第2回「毎日地球未来賞」などが授与されている。
アイキャッチ画像は村上さん
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/lifestyle/entry/2019/019553.html?fbclid=IwAR1DMMXuqkeuwlBMzldrG7SijGB-iJnkSWHcCFBrEXIKYjH2-I24_3t5Ey0

日本語記事
miyataosamuをフォローする
Follow by E-mail / ブログをメールでフォロー

If you want to follow this blog, enter your e-mail address and click the Follow button.
メールアドレスを入力してフォローすることで、新着記事のお知らせを受取れるようになります。

スポンサーリンク
宮田律の中東イスラム世界と日本、国際社会

コメント

タイトルとURLをコピーしました