旅人に対するホスピタリティ -イスラムの寛大なる情

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Translation / 翻訳

 東京のアラブ・レストランに行くと、多くのアラブ人たちが入れ替わり立ち替わりやってきて食事や水タバコを楽しんでいる光景を目にする。多くがこちらには気さくな笑顔を浮かべているが、彼らの様子を見ていると、イスラムのコーラン(クルアーン)にある次の信条を思い出す。


 「近親者に当然あたえるべきものは与えよ。貧者と旅人にも。しかし濫費してはならない」(『コーラン』17章26節)


 「両親にはやさしくあれ、また縁者、孤児、貧者、縁続きの隣人、縁のない隣人、そばにいる仲間、旅人、そして自分の右手が所有するものにも。」(『コーラン』4章36節)と慈愛を与える対象に「旅人」も含めている。


 イスラムの宗教信条の一つには、「客の権利」として3日間にわたる宿泊と食事の権利が与えられるというものがあるが、イスラム世界を訪れれば、その気さくで親切なホスピタリティに容易に気づくことになる。

http://tabiiro.jp/bnr/share_201612.png


 イラン南部のシーラーズの北の入り口に「コーラン門」と名づけられた門がある。ザンド朝のキャリーム・ハーンが門の上部の小部屋にコーランを置いたことから「旅人を守る門」とされた。街道の両側には花木が整えられて旅人を温かく迎える心情が表された。


 加藤九祚氏の『中央アジア歴史群像』の中でも、イブン・スィーナーの『医学典範』の「旅と旅人について」紹介がされ、旅人に対する特別な配慮が説かれている。


「『旅人は、日ごろ家庭で慣れているものから切り離され、疲れと体の不調に襲われる。旅人は自らさまざまな病に冒されぬよう注意しなければならない』という書き出しからはじまって、まず消化のよい食物を少量ずつとることをすすめている。満腹すると、水が飲みたくなり、消化し切れず、吐き気をもよおし、便所に行きたくなる。したがって食事は腹八分目にすべきである。また原則として食事は休憩地でとるべきである。食事には、治療のためでないかぎり、野菜や果物など生のジュースになるものは避けたほうがよい。油で揚げた肝臓などは望ましい植物である。飲料水の少ない地域を旅するときには、水に酢を混ぜて少量飲むとよい。」(61頁)

東京・広尾
「ゼノビア」のクスクス
https://imgfp.hotp.jp/…/91/P027534091/P027534091_480.jpg


「私が砂漠を旅することに何故おまえは驚くのか 不断の歩みこそ生きていることの証ではないか」―イクバール(ウルドゥー詩、松村耕光訳)

ベリー・ダンサーのDilaraさん
http://www.zenobia-ib.com/dance.html


 イスラム世界では旅は特別な意味をもち、それを保護する手厚い心情がイスラムの宗教信条とともに育まれてきた。
アイキャッチ画像は中国のシルクロード
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イラン・イスファハーン
アッバースィー・ホテル
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