シュミット元ドイツ首相、パレスチナからヒロシマへ

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Translation / 翻訳

 西ドイツの元首相(在任1974年~82年)だったヘルムート・シュミット氏(1918~2015年)は東西両陣営の対話の促進に努めたが、中東和平についても1981年4月にサウジアラビアを訪問した際にパレスチナ人の民族自決主義に配慮しなければならないと発言した。この発言に対して、当時のイスラエルのベギン首相は、シュミット氏が第二次世界大戦中にドイツ軍の兵士であったことに触れ、ホロコーストで多数の子供たちが殺害されたことを忘れたようだと、不快感を示した。ベギン首相は、現在のネタニヤフ首相と同じタカ派のリクードの政治家で、1982年のレバノン侵攻を決断した人物である。ユダヤ人の大量虐殺のホロコーストの主体であったドイツの政治家が、パレスチナの民族自決権に触れることは異例のことであり、そう意味でも勇気ある政治家だった。

エルサレム旧市街
イスラムのモスク、キリスト教会が共存する
https://heartandmindforjustice.files.wordpress.com/2013/09/dsc04373.jpg?fbclid=IwAR0rj-pjxMOw4QJYHKi8n-spnuqOqVr1smAVbfbtVZ_KULxUFspYreZeDfg


 1995年、広島大学で名誉博士号を授与された時に記念講演を行った。日本人やドイツ人は、過去の犯罪が2度と繰り返されないための責任を負っていると述べた。ドイツの新聞で平岡敬広島市長が「広島・長崎への原爆投下を、日本の犯した悪行から目をそらさせるために誤用してはならない」と発言しているのを読んで、「深い感動を受けた」と語っている。


 シュミット氏は近隣諸国との良好な関係を築いたドイツの元首相として「村山首相とそれに先立つ細川前首相による日本が犯した犯罪行為や罪悪に対する公に正式に認めたことは勇気あるものでした。日本の一友人として、私はここにお二人に祝意を表するものです。」と述べた。


「現在は過去の産物であります。そして、現在は未来の基盤となるものです。しかし、理性と道義と意思と勇気は、現在を変えることができ、それによって未来を準備することもできるものです。ですから、若い学生の皆さんは、自らの国の過去の歴史を理解しなければなりません。誇らしい善いことも悲しむべき悪いことも見つけるでしょう。皆さんには、いかなる意味でも過去に対する責任はありません。しかし、将来に対しては、皆さんが責任を問われるのです。」http://home.hiroshima-u.ac.jp/forum/27-5/schmidt-1.html

広島平和都市記念碑
http://blogs.yahoo.co.jp/mitokosei/folder/1003067.html?m=lc


 この講演をシュミット氏は、善意を行動で示し、実現するためには、理性と勇気が必要だと結んでいる。シュミット氏の主張は、日本と近隣諸国の関係、また、ともすると政治の意思決定が「流れ」の中で決まってしまっている日本で、道義が通ずる政治・社会を実現し、よりよい未来をつくるためには、「理性」と「勇気」が最も求められているという教訓を与えている。
アイキャッチ画像はシュミット元首相
http://www.dw.com/image/0,,505280_4,00.jpg

ダイアン・クルーガー
ドイツの女優
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