イスラエルの極右を「ユダヤ人ファシスト」と形容したハンナ・アーレント

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Translation / 翻訳

 ロシアのラブロフ外相が「ヒトラーがユダヤ人の血を引く」と発言したことにイスラエルが強く反発している。手塚治虫の「アドルフに告ぐ」はヒトラーにユダヤ人の血が流れているという機密文書をめぐるストーリー展開だった。

手塚治虫「アドルフに告ぐ」 https://tezukaosamu.net/jp/manga/14.html

 ドイツ出身のユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント(1906~1975年)は、イスラエルの極右勢力をアインシュタインらと共に「ユダヤ人ファシスト」と形容した。「ファシスト」とは言うまでもなく、ヒトラーやムッソリーニと同列に並ぶ人々のことだ。

手塚治虫「アドルフに告ぐ」 https://tezukaosamu.net/jp/manga/14.html

 アーレントは1933年にナチス政権の反ユダヤ主義政策を調査したことで逮捕され、8日間拘束されたが、ナチス政権下で身の危険を感じた彼女はドイツを離れ、パリを生活拠点とする。そこでシオニストのグループで接触をもった。シオニストの組織に参加することはなかったものの、パレスチナへの移住とユダヤ人国家を建設することがナチスのユダヤ人攻撃への必然的な対応とも考えていた。

 1941年にアメリカに移住し、シオニズムに共感を寄せる論文を書いたこともあったが、しかし「修正シオニズム」の指導者ウラジミール・ジャボチンスキーをアメリカで支持するピーター・バーグソンが軍事組織「国をもたないユダヤ人、パレスチナ・ユダヤ人委員会」を立ち上げ、アメリカの下院議員などにロビー活動を行うようになると、軍事力に訴えるバーグソンなどを「ユダヤ人ファシスト」と呼ぶようになった。「修正シオニズム」は現在のイスラエルや、さらにヨルダン川西岸・東岸まで含めてユダヤ人国家を創設しようとする領土の絶対性を説くもので、ネタニヤフ前首相などが継承するイデオロギーだ。

 アーレントはアラブ人との合意なしにパレスチナのユダヤ人国家は生存できないと考え、シオニスト政党への批判を強めていった。パレスチナへの植民を進めるハイム・ワイツマン(初代イスラエル大統領となった人物)はイギリス帝国主義の下僕であり、ユダヤ人の領域から異民族を徹底的に排除することを考える修正主義者たちは「ファシスト」であると見なすようになった。

 第二次世界大戦以前、アメリカではシオニズムがユダヤ人の間で主流のイデオロギーになることはなかった。シオニズムはアメリカとは異なる国家への「忠誠」をユダヤ人の間に求めることになるからだ。アーレントも第二次世界大戦が終結すると、シオニストの指導者たちは植民地主義を追求し、またシオニズムを「血(兵士)」と「土(領土)」によるナショナリズムと考えるようになった。

 1948年にイスラエルのへルート党(修正シオニズムに基づく政党)の党首メナヘム・ベギンが党の活動資金調達のために訪米すると、アーレントは物理学者のアインシュタインなどと共に「ニューヨーク・タイムズ」に意見広告を出し、「今日、へルートは自由、民主主義、反帝国主義を説くが、つい最近まではファシスト国家のイデオロギーを公然と喧伝していた。その手段はテロリズムと虚偽の宣伝であり、イスラエルが覇権国家になることがその目的である」と訴えた。

 アーレントが「ファシスト」と呼んだ「修正主義者」たちは現在、占領地でパレスチナ人の住宅を襲撃し、イスラエル国内のパレスチナ人にテロを行い、パレスチナ人とイスラエルの緊張の種を蒔き続ける。まさにアーレントが予見し、危惧したような事態となっている。

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