日本画家の堀文子さんが亡くなってから4年が経ちました。『堀文子の言葉 ひとりで生きる』の中で「自由は、命懸けのこと。」 「群れない、慣れない、頼らない。これが私のモットーです。」と述べておられます。

これは、今の日本や世界についてよく言い得る言葉だと思います。群れて、慣れて、頼るというのが、 米国のトランプ現象、ヨーロッパの極右の台頭、日本のヘイトを煽る傾向になっていると思います。人の考えに流されればいつか自由を失ってしまうことになるでしょう。堀さんや下に述べるハンナ・アーレントのように、歴史を正しく認識し、よく考えて将来に活かすこと、これが堀さんなどの世代を継承する者たちの役割や義務だと思います。

毎日新聞のインタビュー記事で「国民の生命や財産を守るというが、まったくのデタラメでした。太平洋戦争で最愛の兄と弟は戦死し、東京大空襲では家を焼かれました。武器を持ち他国と戦争をするのが軍隊なのです。そのあげく国の命令で人殺しを行うのです。2・26事件を起こした少年のような兵隊がかわいそうに思えるのは、絶対服従するように訓練された若者だったからです。彼らも軍の犠牲者なのです。」と述べています。
https://12a09.wordpress.com/2013/04/22/今、平和を語る堀文子さん/
ドイツ出身のユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント(1906~1975年)は、「悪の凡庸さ」という言葉を使って平凡な人間が行う悪こそ世界最大の悪だと説きました。考えることを放棄することによって、誰もがユダヤ人虐殺に加担したアドルフ・アイヒマンのような人間になってしまうと彼女は訴えています。
アーレントによれば、全体主義は根無し草になった大衆を「反ユダヤ主義」「人種主義」という疑似的な世界観で動員していきました。
私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。
危機的状態にあっても、考え抜くことで破滅には至らない。
【英語】It’s that man becomes strong by thinking I wish.
They don’t seem to come to ruin by thinking out in the critical position.
―ハンナ・アーレント
堀さんやアーレントが指摘するように、政治家や軍部がナショナリズムに訴え、愛国心を鼓舞すると、多くの人々が不幸になることは20世紀の二つの大戦の歴史や、イラク戦争、イスラエルのガザ攻撃など21世紀の中東での紛争が証明するところです。米国のブッシュ政権は9・11事件を受けて「愛国主義」を鼓舞し、正当な根拠がまったく希薄なイラク戦争への国民の支持をとりつけていきました。イスラエルのネタニヤフ首相は「修正シオニズム」という領土に重きを置くナショナリズムに訴えてヨルダン川西岸に入植地の拡大を継続してます。

「改憲」が国民投票にかけられる時が来るかもしれません。私たち日本人も国の将来を誤らないためにもムードに流されず思索を放棄してはならないことを堀さんの主張に接して思います。特に若い人たちは扇情的なアジテーションに抗するような思考力を身につけてもらいたいと考えます。
アイキャッチ画像は堀文子さん

コメント