入植植民地主義とは、入植者たちが先住の人々の土地を収奪することを目的でやって来て、先住の人々の人権を否定し、土地に対する権利を無理やり主張する。先住の人々を追い出す手段は多くが暴力を伴うもので、農地の破壊、人身に対する暴力の繰り返し、また植民地政府による法の強制による土地の収奪などが行われる。
1830年にフランスに征服されたアルジェリアでは入植植民地主義が典型的に行われ、1848年にフランスの国土の一部とされた。アルジェリア独立戦争のイデオローグであったフランツ・ファノン(1925~61年)によれば、フランスはアルジェリア人よりも、その文化、知性、宗教の面で優っていることを「自覚」しながらアルジェリアを征服した。フランスがアルジェリアに投入した入植者たちは、政府が喧伝するヨーロッパ人の優位性に賛同しながら、大規模に土地と資源の収奪を行い、暴力は先住の人々の抵抗に対して恒常的、構造的に用いられ、入植者と先住民を両極に隔て、先住民の権利を奪い、彼らを疎外することになり、植民地政府もその行政を維持するために、入植者の暴力を黙認するとファノンは説いた。
現在、イスラエルによって占領される東エルサレムやヨルダン川西岸の現状についても、ファノンの観察はあてはまるように思える。イスラエルの作家で、平和論者であったアモス・オズ(1939~2018年)はイスラエルの入植者たちを「ネオ・ナチ・グループ」と形容し、極右の民族主義者、あるいは人種主義的な国会(クネセト)議員、さらにはこれらの偏ったイデオロギーを吹聴するラビ(ユダヤ教の宗教指導者・学者)によって支持されていると語っていた。

UCLAのイスラエル研究賞授賞式で
https://newsroom.ucla.edu/file?fid=554ab058299b50421900215c
現在、占領地である東エルサレムやヨルダン川西岸の入植地には50万人のイスラエル人が生活しているが、国際連合人道問題調整事務所(UN OCHA)は2020年に入植者による暴力がヨルダン川西岸のヘブロン、ナブルス、ラマラ、エルサレムなどで771件発生し、133人のパレスチナ人が負傷、9、646本の樹木と184台の自動車が損害を受けたと報告した。さらに2021年になると入植者たちの暴力は増加し、最初の3カ月だけでも210件の暴力事件が起こった。入植者たちは極右勢力だがその暴力について多くの場合イスラエル兵は黙認するか、擁護している。

https://www.aljazeera.com/news/2021/4/14/un-experts-highlight-rise-in-israeli-settler-against-palestinians?fbclid=IwAR2Ge5JlyJftxI8A-QduBD7BI7f4FbGulrRQeVA4uVdmPz3EcqPPAz04v0U
シェイク・ジャッラのパレスチナ人住民の立ち退き命令を契機にする今回のパレスチナの騒擾では、イスラエルの極右の入植者たちが東エルサレムのパレスチナ人の家屋に投石したり、「アラブ人に死を!」などと叫びながらアラブ人に暴力をふるったりした。入植者とパレスチナ人の衝突の中で、イスラエルの治安部隊は、パレスチナ人を逮捕・拘束する一方で、イスラエル人入植者を取り締まることはなかった。
極右ユダヤ人入植者の中心にあるのは、「レハヴァ(Lehava)」という組織で、パレスチナ人やイスラエルのリベラル勢力を攻撃し、ユダヤ人の尊厳を取り戻すことを訴えている。この組織はユダヤ人と非ユダヤ人の交流に反対し、イスラエルにおけるキリスト教の存在や活動も否定する。
2021年5月、ドイツ外務省のクリストファー・バーガー報道官は、ドイツ政府はイスラエルによる入植地の拡大は国際法に違反するものであり、パレスチナ問題の二国家解決の障害であると非難した。日本政府は外務省のサイトなどで、イスラエルの入植地拡大に遺憾の意を表明しているが、首相など政府指導者たちがもっと明確に、国際社会で目立つ形で非難の声を上げたらどうだろう。
アイキャッチ画像ははフランツ・ファノン「我々は反乱を起こす、なぜなら単に多くの理由で呼吸ができないからだ」
https://twitter.com/dena/status/1267274148394360833

https://www.pinterest.jp/pin/809310995523528787/
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