果てない戦争 ーチャルマーズ・ジョンソンが指摘した「悲劇の帝国=アメリカ」

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 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の教授や「日本政策研究所(Japan Policy Research Institute)」の所長も務めたチャルマーズジョンソン氏は、米国の軍事覇権主義は「たえまない戦争、民主主義の崩壊、真実の隠蔽、そして財政破綻」という「4つの悲劇」をたどって崩壊への道を転落するだろうと予測した。日本の途方もない財政赤字は、軍事費の巨額の出費によるものではないが、現在の日本もこれらの悲劇的ファクターに直面しているような気がする。

沖縄のよき理解者だった
https://michisan.ti-da.net/e3268260.html


 第二次世界大戦後の米国の外交、内政の中心に置かれてきたのは「戦い(戦争)」という発想だ。「麻薬との戦い」「貧困との戦い」「対テロ戦争」など、戦争は米国の政治文化の中心であり続けている。「戦い」には軍事力、警察力、強制力が必要だが、戦争が麻薬や貧困など社会経済問題、また急進的なイスラム思想に決して有効ではないことはいうまでもない。


 米国のブッシュ政権は、地理的制約のない、世界規模のテロとの戦いを行うとしたが、しかしアフガニスタンでは米国は「テロリスト」のラベルを貼っていたタリバンが再び政権を掌握した。イラクでは軍事力でサダム・フセイン政権を打倒する外からの「革命」を行ったが、アフガニスタンのタリバンよりもさらに過激なIS(「イスラム国」)の活動の誕生をもたらし、テロは世界中に拡散してしまった。にもかかわらず、安倍元首相は、「米国との集団的自衛権行使に地理的制約は必要ない」という考えを明らかにし、岸田政権は米国のウクライナ政策と一体となり、米国が望む通りに防衛費を倍増する計画だ。


 米国のイスラム世界での軍事行動をとらえて急進的なイスラム主義者は、米国が「十字軍」としてふるまっていると訴えるようになった。米国政府が唱える「戦争」という言葉は、「イスラム過激派」の主張を煽り、その求心力をいっそう高めることになった。ウクライナでの戦争でも米国に協力するイスラム諸国は少なく、米国の中東戦略は破綻した様子だ。


 1964年にジョンソン大統領は、「貧困との戦い(war on poverty)」を唱えたが、米国ではさらに貧富の格差が拡がった。ニクソン大統領も「麻薬との戦い(the war on drugs)」を宣言したが、現在米国では数百万とも見積もられる人々が麻薬使用で刑務所に収監されている。米国は「テロとの戦い」にも成功せず、イラクとシリアの一部は「イスラム国」が支配し、イエメンではアルカイダが勢力を伸長させ、リビアは無政府状態となり、米国のドローンで市民も犠牲になっている。戦争という発想や手段に訴える国は、結局は敗北することは第二次世界大戦や植民地解放、ベトナム戦争、イラク戦争などの歴史が証明するところだ。ローマ帝国も大英帝国も軍事費が大きな負担となって崩壊した。


 米国は「麻薬との戦い」や「対テロ戦争」がどのような形態で勝利するかというシナリオも持ち合わせていない。「戦争国家」のアイデンティティをもつ米国に地理的制約もなく、軍事的に協力することが日本や日本人の利益になるとはとうてい思えない。貧困、麻薬、テロなど世界的規模の矛盾や課題は軍事力ではなく、より幅広い国際的な協調によって改善、解決できるものであることはいまさら強調するまでもないだろう。

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