アフガニスタンは農業国で、山岳地帯にあるために、国土の8分の1のみが農耕に適しているに過ぎないが、しかし85%の人口が農業から生計を得ている。戦乱や干ばつによって不法経済、たとえば麻薬の流通や密輸などが伝統的な農業経済に割り込むようになった。干ばつはアフガニスタンを農作物の輸入国にして、その多くがパキスタンから輸入されるようになっている。ケシが栽培される以前は、主食であるパンの原料となる小麦は重要な農作物で、そのほかにもメイズ、コメ、大麦などが栽培されるが、食物の他に綿花の生産も重要な役割を果たしてきた。綿はアフガニスタンの織物業にとって重要だった。

https://www.aljazeera.com/gallery/2021/10/26/photos-afghanistan-climate-change-farmers-cop26-agriculture
畜産は、食肉、乳製品、また皮革製品の生産をもたらし、羊、ヤギ、ロバ、馬、ラバ、ラクダ、野牛などが飼育されてきた。乳製品は、牛、羊、ヤギからつくられる。中村哲医師が危機感を覚えた2000年の大干ばつは、家畜の大幅な減少をもたらした。林業に使われる土地は国土の3%ぐらいだが、東部とヒンドゥークシュ山脈の南斜面で針葉樹は、建築用の木材として、また輸出用に使われ、ナラの木は燃料として用いられてきたが、違法な輸出のために森林破壊が進んだ。森林の破壊が進むと温室効果ガスの排出が増加し、生態系にも否定的影響を与えることが指摘されている。
アフガニスタンの暴力は、環境問題による農地の減少や森林破壊、干ばつなどによってもたらされ、それに人口増加が加わると、農地や牧畜業、林業で生活できない若者たちが増加することを意味する。

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12月9日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、安保理公開討論「国際の平和と安全の維持:テロと気候変動の文脈における安全保障」で、気候変動問題が時間との戦いであることを強調し、気候変動がアフリカや中東の食の安全保障や資源へのアクセスを脅かしていると述べた。
グテーレス事務総長は、気候変動に対して脆弱な地域は、貧困、低い統治能力、テロリストの活動の脅威を受けていると語り、そのうちの8カ国が国連の平和維持活動や特別政治ミッションが活動している国だ。事務総長が特に指摘したのは、遊牧民や農民をテロリストの活動に招くことになっているマリや、ISが活動するイラクやシリアで、気候変動は、暴力に相乗効果を与えている。

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WFPの予測では、2050年までに飢饉や栄養失調は20%増加し、同様に世界銀行は気候変動が2050年までに2億人の人々を難民にすると予想している。気候変動の被害を受ける国々では、貧困、劣悪な統治能力、テロの惨禍などが見られると事務総長は語った。タリバン統治が安定しないアフガニスタンは、事務総長が指摘するような貧困や統治能力の欠如、テロという三つの課題に直面し続けている。
グテーレス事務総長は冬を迎えるアフガニスタンへの支援の必要性を強調し続けているが、アントニオ・ヴィトリーノ国際移住機関(IOM)事務局長は、11月上旬にアフガニスタンでは国民の半数以上が食料不足に陥り、栄養失調が深刻になり、80%の人々が職業や生活手段を失ったと述べた。
アイキャッチ画像は
2008年、現地で凶弾に倒れた伊藤和也さんの写真展から。
https://shonan.keizai.biz/headline/1187/
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