中村哲医師はアフガニスタンの「水」への関心を呼びかけた

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 「なぜ水が欲しいのか。ペットボトルに入っている水ではなくて、それで耕作ができて、動物が棲み、子どもたちの栄養失調が減ったり、そこで生きていく命の源とでもいうもの、そういうものが必要なんだということを、(アフガン人たちは)口をそろえて言いますね。また、アフガニスタンというのは、いいことか、悪いことか、いわゆる近代化に取り残された国で、自分たちの伝統を頑なに守る民族が住んでいたわけですね。そういうところでは、かえって鮮明に水のありがたさ、自然と人間の共生の仕方といったものが言葉もいらないぐらい、皆、自然に生きている。」


 このように、アフガニスタンで用水路の建設など支援活動を行う中村哲医師は、作家の澤地久枝さんとの対談をまとめた『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』(岩波書店、2010年)の中で語っている。この対談を結ぶ中で澤地さんは、「平和。人間同士の思いやり、理解、いたわりによってつながるいのち」と書いた。

アフガン・ドレス
https://www.pinterest.jp/pin/723038915152953041/


 中村哲医師はアフガニスタンでは、干ばつが深刻になっていて、「現地は修羅場。まず関心を持ってほしい」と事業への支援を訴えていた。大河川の少ないアフガニスタン西部、南部で干ばつが深刻で、多くが難民化している。中村哲医師のペシャワール会が活動し、用水路を築いたのは、アフガニスタン東部だが、アフガニスタン全体が干ばつで危機的状態にある。


 アフガニスタンは農業国で、小麦などの主食の生産が大きく落ち込み、食糧不足をもたらすようになっている。農業が労働人口の50%近くを占め、またGDPの4分の1を構成する。干ばつの背景には地球の温暖化の影響があり、山岳地帯からの雪解け水が激減したため、乾燥に強いケシの栽培が盛んになった。また、政治的混乱のために、灌漑システムの管理も有効に行われていない。隣国イランも干ばつが深刻なために両国で共有するヘルマンド川の水利をめぐっても論争が起きている。さらに、イランの経済的苦境によってイランに出稼ぎに出かけていたアフガニスタン人たちがイラン国外に流出して、イランからの送金が大きく減るようになっている。イランからの送金は、アフガニスタンへの海外からの送金の40%を占めるほどだった。

アフガニスタン
マザリシャリフ
イマーム・アリー廟
https://www.skyscrapercity.com/showthread.php?t=1606506


 アメリカのバイデン政権は、アフガニスタンのタリバン政権への経済制裁を継続しているが、アフガニスタンの民生を安定させる姿勢はまるで見られない。昨年末の米軍の撤退以降、アフガニスタンは再び「忘れられた国」になっている感があるが、アフガニスタンの窮状に日本をはじめとする国際社会は目を向け、必要な支援を行うことがいま切実に求められている。
アイキャッチ画像はhttp://heiwa-oita.org/genda/nakamura.html

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