1948年のイスラエル建国や、19世紀後半以降、エルサレムにユダヤ人の国家を建設しようとするシオニズムによってユダヤ人たちがパレスチナに大量に移住してくる以前、パレスチナで暮らしていたユダヤ人たちは、アラブのムスリムやクリスチャンたちと共存し、アラビア語を話し、神のことを「アッラー」と言い、日常の挨拶の言葉は現在のアラブ人と同様に「アッサラーム・アライクム(あなたの上に平安あれ)」だった。
現在、パレスチナのクリスチャンたちも同様に神を「アッラー」と言い、「こんにちは」の挨拶は「アッサラーム・アライクム」だ。パレスチナ解放闘争でハイジャックなど最も先鋭な活動方針を担ったPFLP(パレスチナ解放人民戦線)の指導者はクリスチャンのジョージ・ハバシュ(1926~2008年)で、パレスチナ人の権利を訴える運動で、ムスリムとクリスチャンは共闘している。もちろん、シオニズム以前のパレスチナのユダヤ人、ムスリムやクリスチャンが互いに排斥し、暴力をふるうことなどなかった。イスラエルが思い出すべきはこうした過去の共存と、なぜ共存が崩れたかというその背景に対する理性的な分析であり、イスラエルのユダヤ人たちのイメージが改善されれば彼らに返ってくる利益も多いことだろう。

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昨年4月、イースターでイスラエルの警察がパレスチナ人のクリスチャンたちがエルサレム旧市街を行進し、聖墳墓教会に到達しようとすると、行進を妨害したり、行進の参加者に暴力をふるったりする様子がビデオで撮られた。パレスチナ人以外の欧米人などのクリスチャンたちが聖墳墓教会に参加するのには何の妨害やハラスメントもなかった。また、アルジャジーラのシーリーン・アブー・アクレ記者の葬儀の葬列に対してもイスラエル警察や軍の嫌がらせがあったが、こうしたイスラエル警察や軍の姿勢はイスラエルの国際的なイメージを著しく低下させるものだ。
昨年5月8日、ロンドンでパレスチナに正義をもたらすための「Convivencia(共存)」という運動が始まった。スペイン語の「Convivencia(コンヴィヴェンスィア)」は、特にイスラム、キリスト教、ユダヤ教が共存していたイスラム統治下のスペインの歴史のことを言い表す言葉だ。イスラム・スペインでは、3つの宗教社会が共存することで、豊かな学芸、文化を築いていった。1492年にムスリムとユダヤ教徒がイベリア半島から追放されると、ユダヤ人はオスマン帝国に移住し、そこでも学術や経済活動で少なからぬ貢献を行った。
パレスチナの「Convivencia(共存)」は、パレスチナ人の人権を尊重し、パレスチナが一つの国家の下で、パレスチナがイスラエルの植民地になっている状態から脱却することを目指し、シオニズムとアパルトヘイト、占領の終焉を訴え、公正で民主的な市民社会をパレスチナ全域で築くことを提唱している。イスラム、ユダヤ教、キリスト教の宗教の根幹にある正義、平等、普遍的な人権を実現することによって平和や民主主義、法による支配を目指す。こうした理念を世界の世論に訴えることによって実現することを願っている。

推進者の中にはイスラエルの反家屋破壊委員会のジェフ・ハーパー氏などがいて、また賛同者の中には映画のケン・ローチ監督、ミュージシャンのキャット・スティーヴンス氏、エジプトの作家のアーダーフ・スエイフ氏などがいる。イスラム、ユダヤ教、キリスト教の宗教理念には相違がなく、いずれも崇高な普遍的な価値を訴えている。過去の共存を思い起こすことは、現在の対立を乗り越えるための知恵や方途を示すものであることは言うまでもなく、「Convivencia(共存)」の運動がその理念の実現を目指す第一歩となってほしい。
アイキャッチ画像はパレスチナの「Convivencia運動」が始まった
https://www.middleeastmonitor.com/middle-east-near-you/convivencia-for-just-peace-in-palestine-a-public-launch/?fbclid=IwAR2CLYxPdtwrtPKDp7iQZ33a3I7mIIkQZJupZ4FxJJEQFmbcINF-rQMwFfY
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