清潔な水は子どもの健康や社会の安定をもたらす

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Translation / 翻訳

 中村医師が活動していたアフガニスタン・ダラエ・ヌール周辺では子供たちがコレラや脱水症で次々と亡くなっていったが、その原因を中村医師たちが調査すると、水不足で食器が洗えないとか、汚い水を飲むなど干ばつによる水不足が原因であることがわかる。また、水がなければ農業の収穫も望めない。2000年の大干ばつでアフガニスタン東部全域では農業の収穫も望めなくなったという見通しも中村医師の『医者井戸を掘る』の中では語られている。


 現在、アフガニスタンは深刻な干ばつ被害に見舞われている。アフガニスタンで活動する武装集団は「IS(「イスラム国」)ホラサン州(ISK)」だが、これと並んでISの支部にはアフリカのチャド湖周辺に「IS西アフリカ州」、さらにコンゴやモザンビークでは「IS中央アフリカ州」が活動している。いずれも水不足が深刻な地域で、清潔な水の供給によって暴力の抑制を考えた中村医師の発想が正しかったことをこれらのIS支部の活動が証明している。


 アフリカ・チャド湖は、降雨量の現象や、農業用水への秩序ない利用によってこの40年間の間に95%以上も面積が縮小して、消滅の危機に瀕する。主要な水源であるチャド湖の縮小は、この湖に接するナイジェリア、チャド、カメルーン、ニジェールの人々の生活や生命を著しく脅かしている。この地域で活動する武装集団のボコ・ハラムは救世主(マフディ)思想に系譜があるカルト集団だ。ボコ・ハラムの指導者アブバクル・シェカウは自らをマフディと考えていた(昨年自殺したという説もある)。水不足に起因する農業生産の低下、貧困、社会的不安定、教育の欠如が、少女たちの誘拐などこの地域を拠点とするボコ/・ハラムによる犯罪活動を果てないものにさせている。

チャド湖の縮小
https://www.un.org/africarenewal/magazine/december-2019-march-2020/drying-lake-chad-basin-gives-rise-crisis?fbclid=IwAR1X4srsO_2gAmB5big96x2RBW7MMNGSA4Br1g8MQrFZxd6-Mc8_H1kv6jk


 また、アフリカ中部に位置するコンゴでは約3分の2の世帯が飲用にできる水を利用することができない。自宅に手洗いがある家庭も17%に過ぎず、農業は雨水に頼り、十分な水量がないために農産物の収穫も不十分で37%の家庭しか十分な食事をとることができない。(「ワールドビジョン」の説明による)

アフリカ地図
https://www.asahi-net.or.jp/~yq3t-hruc/all_Africa_map.html


 アフリカでは自然のダムの役割を果たし、温室効果ガスを吸収する森林の伐採が進み、さらなる干ばつをもたらすようになっている。森林を伐採し、木材を売却したり、人口増加のため居住のために利用したり、また木材は燃料として使われたりする。さらに、灌漑設備の整備が遅れ、水を有効に利用できないことも、コンゴやモザンビークの干ばつを深刻なものにしている。つまり、干ばつに対応できる技術がこれらの国には十分に伝わっていない。コンゴやモザンビークは清潔な水が利用できないために、中村医師がアフガニスタンで取り組んでいたコレラの感染も深刻になり、また農業生産も上がらず、飢餓や栄養失調を深刻なものにしている。

わきだせ! いのちの水
日本伝統の上総掘り井戸をアフリカに
たけたに ちほみ/著
https://www.froebel-kan.co.jp/book/detail/9784577047972/


 アフガニスタン、アフリカ諸国の気候変動による干ばつ、水不足、森林伐採、農業の生産性の低下がISの勢力伸長など暴力の背景になっている。この暴力に空爆など軍事行動では対処できないことを先進諸国、特に欧米世界はよく認識して、改善のための後押しに積極的に取り組むべきだ。気候変動による飢餓や紛争はヨーロッパやアメリカに大量に流入する難民の問題ともなり、その安全保障にも大きく関わる問題だ。

学園で行われた日本式の運動会で旗を振って応援する生徒たち
福島市のNPO法人「ルワンダの教育を考える会」。ルワンダの首都キガリで幼稚園児と小学生約270人が通うウムチョムイーザ学園を支援している。
https://globe.asahi.com/article/11964998
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