陳舜臣が語るウイグル人 ―中国の同化政策はいくらやってもダメ

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 司馬遼太郎との『対談 中国を考える』(初版:1978年)の中で、陳舜臣(1924~2015年)は、中国の少数民族で、トルコ系のウイグル人について次のように語っている。


「蒋介石の国民政府の時代に、同化政策をやったんですよ。あのころはウイグル族のことを回族と言ってたんですが、蒋介石はそれを禁じたんです。回教徒と呼べ、“族”をなくせ。それで漢族化を目指した。つまり日本が台湾や朝鮮でやったと同じ皇民化運動をやった。いまの政府はそれを取り消したわけですよ。いくらやってもダメなんですね。これは少数民族に対する原則ですよ。」

ウイグル
ブドウ
http://www.sanhenews.com/243284148_99917580


 上の「いまの政府」とは中共政府のことだろうが、中国は習近平体制になって「いくらやってやってもダメ」なウイグル人に対する同化政策を強めているようだ。2019年11月6日にスイス・ジュネーブで行われた国連人権理事会の審査で中国のウイグル人に対する大規模拘束など人権問題について批判の声が相次いだ。ノルウェー政府代表は国連に権限が与えられた調査団が派遣されるべきだと述べ、カナダは拘束されたウイグル人などイスラム教徒の解放を求めた。しかし、中国は政治的動機に基づく非難は受け入れることができないと拒絶している(朝日新聞)。

ディルラバ・ディルムラット
ウイグル人女優


 ノルウェーやカナダが中国に対して強い政治的動機をもつとは思えないが、トランプ政権のペンス副大統領は、2018年11月、日本など4カ国訪問を前にして、「ワシントン・ポスト」に寄稿し、中国の影響力拡大を念頭に、インド・太平洋地域のインフラ整備を支援する姿勢を明らかにした。トランプ政権の中国に対抗する姿勢は、封じ込めを行うイラン政策についても同様だ。インドには東西に延びる中国の一帯一路構想に対抗する「南北輸送回廊(International North South Transport Corridor:INSTC)」構想があり、これはインドのムンバイとロシアのモスクワを船や鉄道、道路で結ぶ全長7200キロの複合輸送網だが、インドはイラン南東部のチャーバハール港から中央アジアやアフガニスタンへの通商ルートを確立することを考えている。第二次制裁が発動された翌日の2018年11月6日、トランプ政権は「南北輸送回廊」の一つの拠点となるこの港湾の整備計画を進めるインドには制裁を加えないことを明らかにした。中国を意識した対応だろうが、トランプ政権のイラン政策のちぐはぐな一面を表している。


「水でもない/空気でもない/土でもない/火でもない/殺す者と殺される者とのあいだで/昇る七色虹の下を/永遠の小舟が通る」  ―ウイグルの詩人アフメットジャン・オスマン『ああ、ウイグルの大地』

ウイグル料理
https://ediblechina.wordpress.com/


 この詩は、対決では何も解決しないということを中国のウイグル問題、また米中の対立にも教訓を与えているかのようだ。
アイキャッチ画像はアマゾンより

ウイグル
カシュガルの子どもたち
https://www.pinterest.jp/pin/484348134895805587/
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