子供の日 -子供たちと戦争

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Translation / 翻訳

 今日は「子供の日」。「子供の日」の趣旨は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことにある。漫画家の手塚治虫氏は「子供は、その時点時点で常に現代人であり、また、未来人でもある。」と述べた。


 『いまを生きる』の中でロビン・ウィリアムズ氏演ずる英語教師ジョン・キーティングは「今を生きろ、若者たちよ。すばらしい人生をつかむのだ。」だと生徒たちに説く。人生には詩、美、ロマンス、愛情など遭遇すべきものがあふれているとキーティングは語るが、すばらしい人生を子供たちに送ってほしいと願うのは世界に共通する心情であろう。


 そのための前提条件として平和とか社会的安定、経済的充足は不可欠だが、プーチン大統領のような戦争をする大人は子供たちになぜ戦争をするのかと尋ねられて満足な説明ができることはないだろう。


 俳優の米倉斉加年さんは、小学校4年生の時に福岡市から福岡の農村に学童疎開した。疎開先でイジメに遭ったり、また栄養失調で生まれたばかりの弟が亡くなったりした戦争体験があった。「子どもにまで被害が及ぶ戦争を二度と起こさないため、憲法が掲げる平和主義を大事にしてほしい」と訴え続けた。ロシアのウクライナ侵攻を受けて反撃能力などの勇ましい議論が政界では聞かれるようになったが、まず日本が戦争をしないための知恵や工夫を政治家たちは議論すべきだろう。日本に逃れてきたウクライナ避難民からも日本の良いところはミサイルが飛んでこないところという発言があった。


 ユニセフとUNHCRによれば、シリア難民のおよそ半数は子供たちで、政治の世界の最大の犠牲者といえ、子供たちに対する政治家たちの責任はやはり重い。ウクライナ避難民の子供たちも政治家の愚かな判断のために将来への確信をもてなくなっただろう。


 子供を守るというのは世界普遍的な価値観だ。たとえば、イスラムの宗教的義務としても暴力、搾取から大人は子供を守らなければならないとされる。早婚、子供の労働は認められず、教育は保障される。現代の課題では、環境問題、新種の疫病からも子供たちの保護が訴えられている。(エジプト・アルアズハル大学『イスラムにおける子供たち(Children in Islam)』(ユニセフ、2005年)


 第五福竜丸は、1954年3月1日、米国の水爆実験によって乗組員23人全員が「死の灰」によって被爆して、9月に無線長の久保山愛吉さんが死亡した。この事件を契機に日本の反核運動は盛り上がっていったが、中でも子供をもつ母親たちが署名運動の中心となって3000万人の署名が集まり、1955年の第一回原水爆禁止世界大会の実現となった。

「平和運動の原点」熱気に包まれた第1回原水禁世界大会
 第五福竜丸は、1954年3月1日、米国の水爆実験によって乗組員23人全員が「死の灰」によって被爆して、9月に無線長の久保山愛吉さんが死亡した。この事件を契機に日本の反核運動は盛り上がっていったが、中でも子供をもつ母親たちが署名運動の中心となって3000万人の署名が集まり、1955年の第一回原水爆禁止世界大会の実現となった。
https://mainichi.jp/articles/20201017/k00/00m/040/111000c


 世界の反戦運動には母親たちが重要な役割を果たしてきた。


フランスの歌手シャルル・アズナブールの作詞の歌「戦争の子供たち」は戦時に置かれた子供たちの困難や不安、また希望が描かれる反戦歌だ。
(前略)
戦争の子供たちは
子どもではない
子ども時代を知らぬ
青春も喜びも知らぬこの子たち
飢えと寒さに身を守るものもなく
ふるえていたこの子たち
苦しみに立ち向かい
恐れを口にせず
希望によって生きてきたこの子どもたちは
きみと僕のようなものだ
(後略)
http://shibano.exblog.jp/4387672/ より

シャルル・アズナブール「戦争の子供たち」


 戦争の愚かな本質を子どもたちに訴えてきた元海軍兵士の瀧本邦慶(たきもとくによし)さんは、「大人たちは信用できん」という思いや子どもたちや若者の命を守りたいという願いから戦争の愚かしさを伝え続けた。お国のために死ぬという決意から軍隊に身を投じたものの、戦中、南洋の小島で飢餓など過酷な体験をしたために、だまされたと思い、安全なところにいて、戦争を煽った軍の上層部、政治家、官僚たちを生涯許せなかったという。


 若者よ、私のようにはだまされないでくれ。「国を守る」などという耳に心地よい言葉に惑わされないでくれ。若者を戦争で殺す。その戦争でもうける。それが戦争なんだ。そんな戦争なんかに行くな。頼むから命を大切にしてくれ。 ――瀧本さん


 瀧本さんの言葉は戦争の本質を端的に衝いている。ロシアでも、また日本でも政治家たちは「国を守る」を口にしている。ウクライナでの戦争がある時だからこそ、未来人である子供を大切にするという自覚を特にもちたいものだ。

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