本の紹介
中東の石油利権をめぐって欧米諸国が争奪戦を繰り広げ、武器・弾薬の大量消費によって米国などの軍需産業が大儲けしたイラク戦争がそうであったように、現在の中東紛争の背景にあるのは、「石油」と「武器」という巨額の利益をもたらす経済的ファクターであると言っても過言ではない。また、アフガニスタンのアヘンをもとに製造・流通されるヘロインなどの「麻薬」がもたらす莫大なカネは、武装集団の重要な資金源と化している点も見逃せない。
本書はそうした経済的観点からイスラム世界をめぐる国際政治の力学の変化を明らかにすることを目的とする。エネルギーをめぐる国際間の競合、産油国への武器売却をめぐる欧米の思惑、また大量に買いつけた兵器がいかにイスラム世界の紛争を深刻にさせているかなどを紹介する。地球規模の格差、貧困による人の移動が現在の国際社会にどれだけ重大な問題を起こしているかについても触れている。