プーチンの「自己防衛」の論理と、帝国主義に憤っていたビートルズ

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Translation / 翻訳

 ロシアのプーチン大統領は12日、ロシア極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地を訪問し、ウクライナ侵攻について、それが人々を救助・支援し、またロシアの安全を確保する作戦で、正しい決断だったと述べた。「人々」が具体的に何を指すのか明確ではないが、人を殺害することが救助することには当然ならない。

「自己防衛の口実の下に(攻撃はいつも強国からひき起こされるにもかかわらず・・・巨大軍事力の国家の召使どもは弱い民族にたいしてありとあらゆる悪事をおかす、彼らにはこうするより他に手がないとうそぶいて」 -トルストイ『ハジ・ムラート』

アマゾンより

 プーチン氏の論理は、このトルストイの文章そのもので、プーチン氏もまた宇宙基地での演説で、「私たちに選択肢がなかったのは明らかだ。正しい決断だった」と述べている。プーチン氏の手法はトルストイが否定した帝国主義のそれと重なる。

 ジョン・レノンは1972年にオノ・ヨーコと共同で発表した楽曲「ザ・ラック・オブ・ジ・アイリッシュ(The Luck of the Irish )」の中で、アイルランドの土地を奪った大英帝国を批判している。

“A thousand years of torture and hunger,  千年にわたる拷問と飢餓

Drove the people away from their land,   人々を彼らの土地から遠ざけた

A land full of beauty and wonder,       美しさと不思議に満ちた土地

Was raped by the British brigands!”     イギリスの強盗どもにレイプされた

 ポール・マッカートニーにも同じ1972年に「Give Ireland Back to the Irish(邦題:アイルランドに平和を)」というウイングスとともにヒットさせた曲がある。

Give Ireland back to the Irish  アイルランドはアイルランドに帰せ

Don’t make them have to take it away 国を略奪なんてさせないぞ

Give Ireland back to the Irish アイルランドはアイルランド人に帰せ

Make Ireland Irish today アイルランドは彼らのものなんだ

Great Britian you are tremendous大英帝国、あなたはなんて横暴なんだ

And nobody knows like me 国民は誰も何も知らない、僕のように

But really what are you doin’ でもほんとのところあなたは何をしているんだ?

In the land across the sea 海を渡りその島で

『The Luck Of The Irish』
以前1度取り上げたビートルズのポール・マッカートニーの「Give Ireland Back to the Irish(アイルランドに平和を)」とジョン・レノン…

 ポール・マッカートニーの曲のほうが直接的に大英帝国主義に対して反発する心情を表している。ビートルズの4人のうちレノン、マッカートニー、スターの3人はケルト古来(アイルランド)の姓を名乗り、アイルランド系であることを示している。彼らの出身地のリバプールはアイルランド系の移民が多い街だ。

 アイルランドは、紀元前6世紀以来ケルト系の諸族が大陸から移住してゲール人を形成した。1649年にイングランドのクロムウェルがアイルランド遠征を行い、同島を植民地化した。アイルランドの小作農民たちは地主に地代を納めなくてもよい、小さな土地で生産性の高いジャガイモを栽培するようになり、アイルランド島民はジャガイモに食料の多くを依存するようになっていたが、1845年からおよそ4年間にわたってジャガイモの疫病による大飢饉が発生し、アイルランドの人口は半分になったという見積もりもあるほど大量の餓死者が出て、アイルランドからアメリカ大陸やイングランドなどへの大量の移民が発生することになった。

 PPM(ピーター・ポール&マリー)で有名な楽曲の「虹と共に消えた恋(Gone The Rainbow)」は、その詩の一部はアイルランドの言語であるゲール語になっている。(歌の動画は https://www.youtube.com/watch?v=WEW8Kt10tU0 にある)

Siúil, siúil, siúil a rúin  そっと、忍び足でやってきて

Siúil go socair agus siúil go ciúin  静かに音を立てずにきて

Siúil go doras agus éalaigh liom  戸口まで行き

Is go dté tú mo mhúirnín slán  一緒に逃げましょう、 愛しい人

英語のコーラス部分は:

Go, go, go my love   行きましょう、私の愛しい人

Go quietly and peacefully   静かに、穏やかに進んで

Go to the door and flee with me  戸口に立って、私と一緒に逃げましょう

And may you go safely my dear. そして安全なところへと行きましょう、 愛しい人よ

http://onemusic1.blog133.fc2.com/blog-entry-278.html

 となっている。帝国主義の流儀を踏襲するロシアの攻撃から逃れるウクライナの人々を彷彿させるような歌詞で、ベトナム反戦の想いが込められた反戦歌だった。

クリミア半島はウクライナのものだ
https://www.wbez.org/stories/a-look-at-crimeas-indigenous-tatar-population/5fd1d7b2-0f7d-449a-be33-e9ba0b8ee1f2?fbclid=IwAR1Aks4QhVTHCebtPanZk28lXeBilHxdxfUoxUWJmi-EzxFp9IC5Dm9zKGM

 アルジェリア独立戦争のイデオローグで、医師でもあったフランツ・ファノン(1925~61年)は、暴力は、被植民者たちが自分たちの人間性を否定する抑圧者たちを殺害することによって人間性を回復することができる手段なのだと語った。ロシアが暴力で他国に乗り込んでも暴力の報復が待っているだけだ。

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