「幸福のアラビア」の親日感情と戦乱のイエメンに幸運をもたらした「海の香水」

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Translation / 翻訳

 イエメンは近年紛争国としてのイメージが強いが、それとは逆にシバの女王の逸話のように、古代から地中海方面とインドや東南アジアを結ぶ交易路として栄え、「幸福のアラビア」とも形容されていた。その海上交通の拠点となったモハーの港はモカ・コーヒーの語源ともなっている。


 サウジアラビアなどの「有志連合軍」は2015年3月からイランの支援を受けているとされるフーシ派に対して空爆を加えているが、そのイエメンに2019年8月に入った写真家の森佑一氏はイエメンにある親日感情は日本車など日本の技術がその背景になっているのではないかと述べている。(森佑一「イエメン『幸福のアラビア』いつの日か」)

こういう支援はもっと国民の間に知られてよいと思います
日本政府、イエメンの質の高い教育へのアクセス促進のため、UNICEFに4億1,700万円の無償資金協力を供与
2021年2月23日 サヌア(イエメン)発
https://www.unicef.org/tokyo/news/2021/japan-grants-4-million-promote-access-quality-education-yemen-japanese?fbclid=IwAR16R5SF-GKzo7lOQNMuED4S3_PSs8G2VfRRRRGuNNy9yfLe3WonVgAZYEE


 アフガニスタンで「世界で最も頭が良いのは日本人とドイツ人」という評価を聞いたことがある。アフガニスタンを走る車のほとんどがと言ってもよいほど日本の中古車だ。ドイツ人の「頭の良さ」もやはりベンツなど高級車から来るイメージだろう。山岳地帯が多いイエメンでは日本の四輪駆動車は垂涎の的だ。


 イエメンのJICA事務所が出している「イエメン隊員機関紙」(2007年11月)によればイエメンでの日本語学習熱はアニメや漫画から入っているようだ。ほかにもイエメンに滞在経験のある人々の観察では日本による道路や学校などインフラ整備などが親日感情の背景にあり、アメリカとは異なる平和的関与が評価されている。
http://nakaya-fufu.way-nifty.com/…/2007/03/post_3224.html


 紛争や飢餓、疫病など暗いニュースが続くイエメンだが、「幸福のアラビア」にふさわしいような幸せが舞い降りることもある。2021年2月、イエメン・アデンの南にあるアル・ハイサ村の漁師たちは、アデンの沖合26キロのところでマッコウクジラの死骸を見つけたが、その中から127キログラムの龍涎香(りゅうぜんこう)が出てきた。龍涎香は、英語ではアンバーグリス(Ambergris)と言い、マッコウクジラの腸内で生成する結石であり、シャネルの5番のような高級香料として用いられる。ファーレス・アブドゥルハキームさんら戦乱の漁港都市ホデイダから逃れてきた漁師たちがクジラを海岸まで運び、クジラの解体、龍涎香の取り出しや見張り、またその売却まで延べ100人以上が関わった。アブドゥルハキームさんも龍涎香を初めて見たというように、龍涎香はクジラが海に吐き出してもなかなか見つからないようだ。


 UAEの実業家が150万ドル(約1億6500万円)以上の価格で買い取ったが、この売却はアル・ハイサ村の人々の生活を一変させた。売却した資金は慈善として貧しい人々に与えられたり、また漁師たちの家や漁船の購入に充てられたりした。漁師たちの中には3000万イエメン・リアル(1400万円ぐらい)を受け取った人もいたが、イエメンでは豪邸を買うには十分な額だ。アブドゥルハキームさんは神から授かった幸運と語る。漁師たちがアル・ハイサ村の同族の人々と利益を分かち合うところは平等を信条とするイスラムの信仰を表しているかのようだ。
アイキャッチ画像は

取り出された龍涎香(りゅうぜんこう)
https://www.middleeasteye.net/news/yemen-fishermen-sperm-whale-vomit-ambergris-rich-overnight?fbclid=IwAR0ioBsag_M90hEEtjyBZHRS8_Es4K1_gjUMO9iIB4TS-yF_eIfJn62Zmow

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