ノーベル文学賞受賞者エルノー氏はイスラエルのアパルトヘイトに抗議の声を上げる

日本語記事
スポンサーリンク
Translation / 翻訳

 昨年ノーベル文学賞を受賞したフランスのアニー・エルノー氏は「今回の受賞であらゆる社会の不平等と闘い続ける責任を負うことになった」と述べ、抑圧された人々のための活動を行っていく決意を示した。

 エルノー氏は様々な機会でその抑圧され、不公正、不平等の下に置かれたパレスチナ人への共感を示してきた。彼女はイスラエルに対するBDS(ボイコット、投資撤収、制裁)運動の積極的な支持者として知られる。

Écrire la vie (生を書く) (Collection Quarto, Gallimard), 2011.
アマゾンより

 2019年5月、他の100人余りのフランスの芸術家とともに、イスラエル・テルアビブで開催されるユーロヴィジョン・ソング・コンテストのボイコットを表明し、「フランス・テレビジョン(フランスの公共放送)」もこのコンテストを放映しないことを訴えた。ユーロヴィジョン・ソング・コンテストは欧州放送連合(EBU)加盟放送局によって開催される、毎年恒例の音楽コンテストで、1956年から開催されており、視聴者の数も1億人から6億人と見られる権威ある音楽コンテストだ。

 エルノー氏はまた2018年におよそ80人のフランスの芸術家とともに、イスラエルとフランスの文化協力の企画「セゾン・フランス―イスラエル」のボイコットを呼びかけた。これはマクロン大統領とネタニヤフ首相によって6月5日に除幕式が開催される予定だったが、この企画がイスラエルの数々の国際法違反の行為を覆い隠すものだと訴えた。その請願書にはイスラエルとの関係正常化を拒絶することはいかなる人にとっても道徳的義務であると書かれてあった。

アニー・エルノーさんの「シンプルな情熱」
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20221007-OYT1T50006/

 またエルノー氏は、ジョルジュ・イブラヒム・アブダッラー氏(1951年生まれ)の釈放を要求している。アブダッラー氏は、1980年に「レバノン革命軍」を創設し、米国の武官チャールズR.レイ氏とイスラエルの外交官ヤコブ・バリスマントフ氏を殺害した罪で現在、フランスのラヌムザン刑務所で終身刑の罪で服役しているが、エルノー氏はレイ氏がCIAのエージェントで、またバリスマントフ氏がモサドの要員であり、アブダッラー氏の行為はパレスチナの植民地化に抵抗したものであったと擁護している。

Abdallah Georges Ibrahim is suspected of being the leader of the Lebanese Armed Revolutionary Forces, thought to be behind a wave of terrorist attacks in France. (Photo by BRUCELLE Armel/Sygma via Getty Images)連行されるジョルジュ・アブダッラー氏
https://www.gettyimages.ca/photos/georges-abdallah

 エルノー氏はイスラエルを「アパルトヘイト国家」と形容し、2021年5月のイスラエルによる「壁の守護者作戦」後にエルノー氏は「イスラエルは植民地勢力であり、パレスチナは植民地化され、これは紛争ではなく、アパルトヘイトである」という抗議文書に署名した。

 中央大学文学部の宇佐美毅教授は、『ハフィントンポスト』紙の中で、村上春樹氏がノーベル文学賞を受賞できない理由として、1994年受賞の大江健三郎氏と比較し、「大江氏の作品では、社会の中で少数派の人々の葛藤や原子力問題など、政治的・社会的問題が扱われるのに比べ、村上氏の作品はあまりそういう要素がみられない。そのため、村上氏の作品は強力なテーマや目的が欠けていると見られ、それがノーベル賞を受賞できない理由のひとつだろう」と分析している。

村上春樹がノーベル賞を取れない理由 海外メディアが分析
英国のブックメーカー(賭け屋)のラドブロークスによると、文学賞受賞者として最も人気が高いのが、村上春樹氏だ。賭け率は3倍。2番人気は、米国の作家ジョイス・キャロル・オーツ氏で、6倍である。今までなぜ、受賞できていないのか。

 日ごろの言論の中にも、頻繁に声を上げるエルノー氏とは異なり、政治・社会問題に触れることが多くないことも選考に際して村上氏が目立たないことになっているのかもしれない。

アイキャッチ画像は

アニー・エルノー氏
http://frenchcodeblog01.blog107.fc2.com/blog-entry-1032.html

日本語記事
miyataosamuをフォローする
Follow by E-mail / ブログをメールでフォロー

If you want to follow this blog, enter your e-mail address and click the Follow button.
メールアドレスを入力してフォローすることで、新着記事のお知らせを受取れるようになります。

スポンサーリンク
宮田律の中東イスラム世界と日本、国際社会

コメント

タイトルとURLをコピーしました