イスラムの礼拝の呼びかけと教会の鐘が同時に聞こえる国 -アルバニア

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 バルカン半島西部にあり、アドリア海に臨むアルバニアは、面積は日本の四国の1.5倍、人口は約286万人の小国だ。住民はイタリア人の系統で、ローマ帝国の支配を受けた後、様々な民族の侵入があり、15世紀にオスマン帝国の統治下に置かれた。1946年から1991年までエンヴェル・ホッジャなどアルバニア労働党の支配を受けた後に、1991年に初めての自由選挙が行われ、米、英、ECと外交関係をもち、また1992年にイスラム協力機構(OIC)に加盟するなど労働党政権時代に鎖国状態にあったものの、次第に国際社会に参加していき、現在ではEUに加盟申請を行っている。
 宗教構成では、イスラムが57%、ローマ・カトリックが10%、正教が7%となっている。

モスクとキリスト教会が並ぶ
アルバニア
Albania is a place of deep religious tolerance 星と三日月教会, says upcoming
@undp
report. So much to learn from country amid global surge of hate and violence #CVE2017
https://twitter.com/UNDPEurasia/status/925622270630023169


 この国は、旧ユーゴスラビアなどで冷戦の終焉後に見られた宗教に基づく悲惨な民族紛争とは無縁で、キリスト教会とモスクが同じ街区に並び、異教徒間の通婚はごく普通に見られる。アルバニア中南部の世界遺産の都市ベラトのオノフリ美術館には「受胎告知」のイコン画があり、その背景にはイスラムのミナレットが描かれ、アルバニアの宗教的調和や共生を強調している。


 2014年にイタリア以外の初のヨーロッパ訪問としてフランシスコ教皇はムスリムが多数派の国アルバニアを訪問し、アルバニアが宗教的寛容の顕著な例であり、世界の共存の模範例であると述べた。教皇は、アルバニアの平和的な宗教の共存を称えつつ、「特に本来の宗教の精神が過激派グループによって曲解され、宗教的相違がゆがめられている時代に貴重なものだ」と述べた。

https://sasurau-fukurou.com/2019/06/16/albaniandjapan/


 また、2017年5月にアルバニアを訪問した国連の「宗教・信念の自由に関する特別報告者」であるアフメド・シャヒード(モルディブの外交官)は、「宗教や信念の自由はアルバニアでは実際に現実としてあり、思想、良心、宗教や信念の自由を尊重し、宗教間の調和を達成するというアルバニアの経験から世界が学ぶことは多々ある」と述べた。


 アルバニア北部のマルバルズの村では、宗教を禁じたホッジャ政権時代に被害を受けたカトリック教会再建のための費用をムスリムたちが寄付でまかなった。ギリシアとの国境近くのレスコヴィクの村では第二次世界大戦中に破壊されたモスクの跡地に礼拝所が設けられ、ムスリムとクリスチャンたちが同時に礼拝を行っている。アルバニアではイスラムの断食明けの祝祭(イード)にもクリスチャンたちが参加し、また川の中で十字架を探す「祝福された水の日」の行事にはムスリムも参加し、十字架を発見したりしている。


 アルバニアでは、子どもの時からイスラムの礼拝への呼びかけ(アザーン)と教会の鐘を同時に聞くことによって宗教間の共存が当然のものとなって将来も継続していくに違いない。


アイキャッチ画像はフランシスコ教皇
私はアルバニア人だから聖書もコーランも愛する
https://in.pinterest.com/pin/102316222763952398/

アルバニア人女優
アマンダ・ライカイ
https://www.listal.com/viewimage/2893927
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