人間がペットを飼うのは、人間には「分け与える」ことに喜びを感じる本能があり、ペットを飼い、食事を与え、喜ばれ、相手に必要とされることで赤ん坊を育てるような幸せを感じるからという説がある。
https://www.mag2.com/p/news/357622
秋田犬保存会の支部は現在、海外では米国、台湾、イタリア、中国、そして軍事的衝突の可能性も指摘されるロシアとウクライナに支部があるそうだ。ロシアとウクライナは数少ない秋田犬保存会の海外支部のある国で、両国は秋田犬の存続にとっては貴重で、重要な国だ。
ウクライナの保存会は2014年1月に創設され、事務所は東部のドニエプロペトロフスク市にあり、支部のウェブサイトには「秋田犬は17世紀からサムライに 飼われ、数世紀間その姿を変えていない。 寒さに耐え、主人に忠誠を尽くす」とある。
(名越健郎「秋田犬の国際化戦略」)

https://www.tv-tokyo.co.jp/…/ent…/entry/2019/020227.html
「秋田県民の声」のコーナーには両親がウクライナ人のアメリカの11歳の少女の手紙が掲載されている。
「私と家族は、日本や日本の伝統を尊敬しており、とりわけ日本に暮らしている方々に敬意を感じています。 私たち家族は映画『ハチ』を観て悲しんだり喜んだりしましたが、日本にハチという英雄的で希望にあふれる犬がいたということや、日本人がハチを称えてきたことをとてもうれしく思いました。」
秋田犬を慈しむ感情は当然のことだが、対立関係にあるウクライナとロシアに共通のものとしてある。
ロシアではプーチン大統領やフィギュアスケートのザギトワ選手の愛犬として知られ、日ロ合作映画「ハチとパルマの物語」が昨年公開されたように、日本以上に秋田犬は人気があるようだ。「ハチとパルマの物語」は1970年代後半にモスクワのヴヌーコヴォ空港で飼い主を待ち続ける秋田犬の話で、日本の「忠犬ハチ公」のエピソードと共通項がある。

https://amanaimages.com/…/news_zagitovamasaru_20180526/
ウクライナ、ロシアで秋田犬がかわいがられているという話に接して下のペルーの小説家であるマリオ・バルガス=リョサのノーベル文学賞受賞の言葉を思い出す。
「私はあらゆる形のナショナリズム、というよりあの偏狭な宗教、志が低く排他的で、知的地平を切り裂き、民族に関する差別的な偏見を胸の内に隠し、たまたま生まれた場所という単なる偶然の結果を至上原理とし道徳的かつ存在論的な特権とする、あのナショナリズムというイデオロギーを憎みます。・・・馬鹿げた小競り合いと論争に血道をあげ、天文学的な数値の金額を学校や図書館や病院ではなく兵器購入のために浪費してきたことに関して、ナショナリズムほど貢献したものはほかにありません。」マリオ・バルガス=リョサ『読書と虚構を褒め称えて』
ウクライナを舞台にして対立するアメリカもロシアもリョサの表現するような「天文学的数値の金を軍備に費やし」、戦争で人々の幸福を奪っている。秋田県大館市では、イスラエルの青年が秋田犬の数少ない貴重なブリーダーとして活躍するようになり、命を育てることに喜びを感じ、本国での命を奪う紛争のバカらしさを感じていることだろう。主人がいなくなっても主人のことを想い続ける秋田犬の物語に共感し、ペットを飼うことに幸福を覚え、そのような幸せを奪う戦争に不合理を感じるのはロシアとウクライナにも共通する心情だろう。

(公社)秋田犬保存会
公益社団法人秋田犬保存会(秋田犬会館)より
アイキャッチ画像は(公社)秋田犬保存会
公益社団法人秋田犬保存会(秋田犬会館)より
コメント