アフガン人から評価された独立独立不羈の国―中村哲医師が紹介したアフガニスタンでの日本のイメージ

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 タリバン政権復活となったアフガニスタンは、銀行が倒産寸前で、また90%以上の人々が食事も満足に口にできないという深刻な危機的状況にある。こういう時こそ日本が主導的役割を果たせば、アフガニスタンをはじめイスラム世界の日本への評価はきっと高まることだろう。あらゆることはアフガニスタンの人々の利益のためにという想いでアフガン支援を続けてほしい。中村哲医師も「小さくともどんな大国にも屈せぬ独立不羈(他から影響されずに行動すること)の日本」というイメージが欧米列強支配にあえぐアジア民衆を励まし、アフガニスタンでも代々語り継がれた」と述べている。(『医者、用水路を拓く』40頁)

紀伊国屋書店のページより

 19世紀のアフガニスタンは、イギリス、ロシアという帝国主義のくびきの元にあった。アフガニスタンをはじめイスラム世界を帝国主義から救おうとした人物にジャマール・アッディーン・アル・アフガーニー(1838~97)がいる。彼は、イスラム世界の団結で、その救済を考えたパン・イスラム主義のイデオローグだった。名前の通り、アフガニスタン出身という説もあるが、イランのアサダーバード出身とも言われている。

 アフガーニーは、イスラムは変革と進歩の宗教と訴え、ヨーロッパ帝国主義の進出に対してムスリムが結束し、また行動を起こすことを主張した。アフガーニーは、ムスリム世界の弱体化や、宗教的停滞をヨーロッパ膨張主義、独裁的支配者の存在、沈滞する既成の宗教界のせいだとして、これらを乗り越えるためにもイスラム世界が結束して、本来イスラムに備わっていた進歩と変革、また理性と科学を復活させねばならないと説いた。

 さながら現在のイスラム主義(イスラム原理主義)に通底する考えだが、大川周明のように、日本人でもアフガーニーを評価、理解する人物がいた。大川はアフガーニーのことを「ザイド・ジャマルッディン」と表記しているが、「回教諸国聯盟問題 」と題した文章の中で、

「全回教主義の最も熱烈なる宣伝者として名高きザイド・ジャマルッディンは、回教諸国に向かつて極力政治的同盟を勧告し、是くの如き政治的利害の共通が、回教其のものの興睦に欠くべからざる条件なることを力説した。彼は是くの如き理想を宣伝する為に、挨及(あいきゅう、エジプト)、波斯(はし、ペルシア) 、印度、土耳古(トルコ)を歴遊した。而して時の土耳古皇帝アブドウノレ・ハミッドは、彼の為に一切の後援を惜まなかった」と書いている。

 大川と同じような立場をとったのは日本の大アジア主義者たちだったが、その中の一人頭山満(1885~1944年)は、東洋から西洋を駆逐するのは、真の文明を創設するために必要と考え、アジアが一体となって「攘夷」を行い、日本が中心になって獣の文明から人類を救済しなければならないと訴えた。この考えの是非はともかく、アメリカがアフガニスタンから撤退したから日本のアフガニスタンへの関心も希薄になるのではなく、日本で学んだアフガニスタンからの留学生1400人をはじめ日本に期待を寄せる人々の救済に積極的に取り組んでほしい。

彼らを難民として受け入れるべきだと思います
http://www.shd.chiba-u.jp/…/act…/activities20210921.html

 中村医師は仏教の伝教大師最澄(767~822)の言葉「一隅を照らす」を座右の銘としていた。「一隅を照らす」とは、「各々の仕事や生活を通じて、世のため人のためになるように努力実行することで、お互いが助け導き合い、あたたかい思いやりの心(仏心)が自然と拡げられていく」というものだ。(天台宗 「一隅を照らす運動」のページより)日本はアジアの「一隅を照らす国」であってほしいと思う。

アイキャッチ画像は https://www.iwanami.co.jp/news/n32886.html より

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