在日アフガニスタン人医師も説く「命の水」

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 米国は911の同時多発テロを受けて対テロ戦争を開始し、フランスも2015年11月のパリでの同時多発テロの報復爆撃をシリアに行った。報復爆撃でテロを行った者を殺害できるとは限らず、巻き添えに遭う市民がいることを忘れてはならない。イスラム系諸国の主権を無視し、即座に爆撃を行う欧米諸国の姿勢は傲慢とも言えるものだ。


 テロには戦争で報復するという欧米の姿勢は暴力の種子を蒔くばかりだろう。2012年末にアフガニスタンのジャーナリストを招請してそのメディア復興に関する研究会やシンポジウムを行ったが、そこでアフガニスタン南部のカンダハルから来たジャーナリストは、カンダハルの学校の半分は日本が建ててくれたと感謝の想いを語っていた。そのジャーナリストは、カンダハルのJICAが造った道路は緒方貞子さんの名前をとって「オガタ・ロード」と呼ばれていることを紹介し、日本の支援は平和の種子を蒔くと述べていた。

カンダハルのオガタ・ロード


 静岡県島田市で「レシャード医院」を開業するアフガニスタン人医師のレシャード・カレッドさんは、911の同時多発テロを受けて2001年10月に米国などによるアフガニスタン攻撃が始まると、2002年4月にNGO「カレーズの会」を発足させた。「カレーズ」とはアフガニスタンの言葉で「命の水」「癒やしの源」などの意味で、アフガニスタンでは地下用水路の名称としても用いられている。カレーズの会の診療所はアフガニスタン南部のカンダハル郊外に置かれた。当時のカンダハルは、住民100人につき、医師1人という状態で、診療所を開くと、1カ月で600人もの患者がやって来た。無料の診療費と薬剤費は日本からの支援によってまかなわれた。


 カレッド医師もまた命の水の大切さを認識していた。カンダハルの診療所では多くの患者が感染症に罹患していたが、その一つの要因としてアフガニスタンでは清潔な水を飲めないことがあった。当時アフガニスタンで清潔な飲料水を利用できるのは全人口のわずか27%で、そのため下痢、赤痢や胃腸障害などの疾病に罹っていたが、水を清潔にするためにカレッド医師が思いついたのが、静岡県で防災用に開発された「光触媒による殺菌効果をもつチップ」だ。光触媒は酸化チタンを触媒として光(紫外線)をあてると、有機物(臭気、汚れ、ウイルス、細菌、カビ、有害物質)を二酸化炭素と水に分解する。その力は現在消毒に広く使われているオゾンや塩素よりも強力であり、日本の技術がアフガニスタンの人々の健康や医療に役立つことになったが、カレッド医師によれば、消化器感染症が激減したという。

https://www.karez.org/


 カレッド医師は、米軍のアフガニスタンでの軍事行動について「戦争や侵略がもたらすものは平和や安定ではなく、むしろ破壊と絶望のみなのです」(『戦争に巻きこまれた日々を忘れない』新日本出版社、2016年7月)と厳しい。
アイキャッチ画像は「育ててくれた恩返し」 祖国と地元の医療支援 アフガン出身、静岡の医師
https://www.sankei.com/…/news/140817/lif1408170012-n1.html

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