アフガニスタン・カンダハルで教育機関を運営してきたグースッディーン・フロータン氏から支援を求めるメールが届いた。メールによれば、アフガニスタンの子供たちにとって初等教育を終えるのも「遠い夢」になっているのだそうだ。タリバン復権に伴う政治変動は多くの学校の機能停止をもたらし、また経済危機は日に日に深刻になり、学費の支払いも思うに任せない父母が増加している。学校の維持費、教員の給与の支払いも滞り、生徒たちの学校生活の継続も困難になった。

下は、今年4月に書いた文章の一部だが、アフガン情勢は予想した通りに展開した。
「米国のバイデン大統領は、21年4月13日、911の同時多発テロが発生してから20年にあたる今年9月までに米軍をアフガニスタンから全面撤退させる意向であることを明らかにした。これはアメリカ史上最長で、年間1000億ドルもの経費を要する戦争を終結させることを意味する。(BBC, Feb 28, 2020)アメリカはアフガニスタン政府の腐敗で、数十億ドルを浪費したと見られている。(The Hill, March 1, 2021)
米軍の支援がなければ、アフガニスタン政府軍はタリバンの攻勢にあっという間に飲み込まれてしまうという危惧がある。米軍の20年間の戦争でもタリバンの活動を制圧できなかったばかりか、タリバンの戦闘能力は政府軍を上回り、米国がつくった政府は腐敗で国民の支持を得ているとは到底言い難い状態にあり、かつてのベトナム戦争の際のサイゴン政権のように、容易に崩壊してしまうのではないかという懸念が米国政府やアフガン政府の間でも広く共有されている。」
上に書いた以上にガニ政権は8月に脆くも米軍が撤退する以前に崩壊し、ガニ大統領は私的に築いた財産とともに国外に逃亡してしまった。米軍が撤退した現在、懸念されるのはアフガニスタンに対する国際社会の関心が低下することだ。アフガニスタンが混迷に陥れば、アフガニスタンが各地の過激派や武装集団を磁石のように吸い寄せ、これら組織の拠点になることが懸念される。
11月3日、米空軍監察総監のサミ・サイード中将は、8月29日に米軍が誤爆で7人の子供を含む民間人10人が犠牲になった事件は、いかなる法律にも抵触するものではないという結論を出した。このように米国に自省する姿勢がないこともまた米欧諸国に対するテロの要因となってきた。米国は軍事的にアフガニスタンから撤退したが、アフガニスタンの経済復興や、その発展に道義的責任をもつことは明らかだ。

日本はタリバン政権崩壊後、アフガニスタン支援国会合を東京で催すなど多くの努力を払ってきた。農業支援、インフラ整備、また雇用の創出など元タリバン兵士の社会への再統合や、教育支援、さらにはアフガニスタン人研修員を日本に受け入れて人材育成にも協力してきたが、かりにISのテロなどでアフガニスタンが内乱状態になると、これまでの支援の意義も薄くなってしまう。
2010年代以降、ヨーロッパで大規模なテロを起こしたISもシリアなど紛争地で、軍事的知識を蓄え、訓練を積んだ。タリバン復権でアフガニスタンが安定への道筋がなかなか見えないと国際テロに力を与えることにもなる。そういう意味でも日本や日本人もアフガン情勢に継続して関心をもたなければならないだろう。
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