難民カメラマン・キャパのファシズム・戦争との闘い

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Translation / 翻訳

 ロバート・キャパは、彼自身が難民で、UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)から著名な難民の一人として紹介されている。


 キャパはハンガリー・ブダペスト生まれのユダヤ人で、17歳の時にハンガリーのホルティ・ミクローシュのファシスト政権の打倒を考えていた人物と疑われ、ドイツ・ベルリンに逃れるように移住した。ドイツ政治大学(Deutsche Hochschule für Politik)でジャーナリズムを勉学するかたわら暗室係のアルバイトをしていたが、1933年にナチス政権が誕生すると、その迫害を逃れてフランス・パリに向かった。パリではフランス人民戦線の写真や、それと対比させるかのようにファシストの在郷軍人たちの写真も撮った。


 キャパは、戦場で兵士だけでなく、子供たちや女性の写真をとり続けた。戦争を止めさせ、平和を訴えるには、特に戦争を望む大人とは対極にある無垢な、大人が守らなければならない、あどけない表情の子供たちの写真は有効と考えたに違いない。


 フランスの人民戦線を追うように、スペイン内戦の取材をするようになったキャパは有名な「死の瞬間の人民戦線兵士」の写真を撮り、アメリカの写真誌『LIFE』に掲載された。キャパの名前は一躍有名になったが、諸説があるものの、兵士はコルドバ戦線で頭を撃ち抜かれる人民戦線の兵士とされた。スペイン内戦で敗れ去った人民戦線の兵士たちはピレネー山脈を越えてフランスの警察官に引率されて整然と歩く写真がキャパにはある。


いやいや!かれらは死にはしない!
かれらは硝煙のただなかに
すっくと立っている
燃える蝋燭の芯のように ―パブロ・ネルーダ『死んだ義勇兵たちの母親にささげる歌』
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/blog-entry-3761.html

ロバート・キャパ写真集 [戦争・平和・子どもたち]
https://www.book-komiyama.co.jp/booklist_detail.php?item_id=74592&fbclid=IwAR1bEm5PrvofZdE4KLhwRaRyHwnONbGa1EvDP6OJC_McLR3SDs3Q1JVn2Uk


 彼をドイツから追い出したファシズムが崩壊し、第二次世界大戦が終わった時、キャパは次のように語った。


「すべてが終わり、わたしは大喜びで失業した従軍カメラマンとなり、生涯、失業したままでいたいと願っている。」


 現在、世界の難民の数はロシアのウクライナ侵攻もあって1億人を超えると見られている。1970年代の300万人と比べると、著しい増加だ。戦争カメラマンは決して失職していない。


 いま、政治家たちとの関わりが問題になっている「統一教会」は「偽装するファシズム」と形容されたことがある。その目指すところは、個人の指導や崇拝による政治や社会の統制なのだろう。キャパが闘ったファシズムが日本では我々があまり意識しないところで鎌首をもたげ、日本を戦争への道に歩ませようとしている。平和安保法制や台湾海峡の緊張などの背景にある意図がより明らかになってきた。そんな勢力に日本をゆだねるわけにはいかない。

Robert Capa: Children of War, Children of Peace
https://dessinweb.jp/SHOP/RO-0076.html
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