ウクライナ戦争でロシアを批判する旧ソ連のウズベキスタンとナヴァーイーの教訓

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Translation / 翻訳

 ロシアがウクライナの西隣にあるモルドバへの軍事介入の可能性が指摘されるようになった。ウクライナでの軍事作戦にてこずる中でロシアが本当にモルドバにまで手を出すことができるのかと思ってしまうが、旧ソ連諸国を勢力圏と考えるプーチン大統領はモルドバを牽制することによってウクライナ以外の旧ソ連諸国をも威圧する効果を考えているように見える。
 しかし、中央アジアのウズベキスタンなどはあからさまにロシアのウクライナ侵攻を批判するようになっている。3月17日、ウズベキスタンのアブドゥルアズィズ・カミロフ外相はウズベキスタンがウクライナの独立、主権、領土保全を認め、プーチン大統領が独立を認めた「ルハンスク人民共和国」「ドネツク共和国」を承認しないことを明らかにした。

ウズベキスタン・タシケントで


「すべての人々よ/憎しみあうことなかれ/互いによき友人たれ/友情は人々のなすべき道なり」
「煙が帳となって道をさえぎっているのは、もう近くに、たき火がある証拠である。そのように、暗闇の後には、必ずや輝ける光が訪れる。君よ、それを信じるのだ。そして不動であれ」 ―アリーシエール・ナヴァーイー(ウズベキスタンの詩人:1441~1501年)


 ナヴァーイーは15世紀末のティムール朝のスルタン・フサインの宰相で、ヘラート(現在のアフガニスタン西部の都市)の宮廷で活躍するとともに、多くの詩や散文を創作し、多くの教訓的な言葉も残している。ナヴァーイーによる上の2つ目の教訓は戦争状態も平和に変わり得るという平和への祈りをも表現しているようだ。中央アジアでも無常観を詠んだ詩はこの文章の最後に付けたルーダキーの詩のように少なからずある。

ティッラ・カーリーのマドラサ
サマルカンド
ウズベキスタン

 ナヴァーイーは、ウズベキスタン・タシケントの「ナヴォイ劇場」にその名を留めている。ナヴォイ劇場は、満州にいた第10野戦航空修理廠の部隊である永田行夫氏率いる「永田隊」隊の日本人抑留者たちが建設に携わった。 1966年の大地震でタシケント市内の多くの建造物が倒壊したが、ナヴォイ劇場はビクともすることがなく、現地の人から日本人の技術が評価されることになった。
 ウズベキスタンのカミロフ外相は、即時停戦とロシア、ウクライナの双方とも、互恵的な協力関係を結んでいくという考えを明らかにした。また、ウクライナに対する人道支援を行い、医薬品、医療器具などを提供したが、いっそうの人道支援を継続していくことも表明している。ウズベキスタンはロシア主導の「ユーラシア経済連合」にも集団安全保障条約にも加盟していない。旧ソ連諸国とはいえ、ウズベキスタンはイスラム・カリモフ大統領の独裁政権時代から中立的立場を追求できるステップを踏んできた。
 他方、中央アジアの経済大国とも言えるカザフスタンはウクライナ戦争については中立的立場をとっているが、国民の間では見解が分かれているようだ。3月6日にはカザフスタン最大都市のアルマトゥイでおよそ3000人の人が集まって反戦デモが繰り広げられた。カザフスタンではウクライナ戦争を報ずるロシアの政府系メディアに接する人々の間ではロシアのウクライナ侵攻に共感がある。しかし、特に若い世代では、ロシアの侵攻当初から反戦ムードが強く、反戦デモが行われるのは、カザフスタンでは異例のことだった。アルマトゥイのデモではウクライナ国旗とともに、「平和」などのスローガンが書かれたプラカードが多数見られた。
 ロシアへの出稼ぎ労働者が多いタジキスタンでは、ウクライナでも戦っている人も少なからずいるようだ。3月23日付の「ラジオ自由ヨーロッパ」はウクライナでの戦闘で死亡した2人のタジク人がタジキスタンで埋葬されたことを伝えている。

サマルカンド・レギスタン広場


黒き瞳の乙女たちと楽しく生きよ
この世は幻に過ぎず、風のように過ぎ去ってしまうもの
来るべき時を楽しく迎えよ
過ぎ去った時を思い出すな
私と共にいるのは薫り高き巻き髪を持つ乙女
私と共にいるのは天女のような美しき乙女
恵み、楽しむ人は幸運な人
恵むことなく、楽しむことのない人は不運な人
ああ、この世は過ぎ去って行く雲と風のようなもの
酒を持ってくるのだ!なるようになれ! -ルーダキー(タジキスタンの国民的詩人とされる:860~941年)
https://s.webry.info/…/sarasaya…/200601/article_2.html

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